マテハンとは、製造や物流の現場において、物品の移動や保管に使われる荷役機器や仕組みのことをいいます。最近では、物流倉庫の省人化や業務の効率化を目的とした「マテハン機器」の導入が増えています。
本記事では、マテハンとは何かを整理し、導入のメリットやポイントを解説します。
目次
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1マテハンとは
マテハンとは、製造や物流の現場における「物品の移動や保管」業務にかかわる仕組みや機器のことをいいます。
正式名称は「マテリアルハンドリング」で、略称の「マテハン」と呼ぶのが一般的です。
「JIS(日本産業規格)」や「マテハン協会」によると、マテハンは以下のように定義されます。
「製造に用いる材料,部品,半製品などの物品の移動,搬送,取付け,取出し,仕分けなどの作業及びこれに伴う作業」
(引用元:3047番「マテリアルハンドリング」|JIS(日本産業規格))
「あらゆる目的・時・場所とで、何らかの物を何らかの方法で取り上げたり、移動したり、置いたりすることによって、経済性や生産性及び品質を向上させる手法」
(引用元:MHとは|日本マテリアル・ハンドリング(MH)協会
上記からわかるように、マテハンとは作業そのものだけでなく、作業を効率化するための仕組みづくりも含みます。効率化にはマテハン機器と呼ばれる機械や道具が使われます。
2作業別:マテハン機器
マテハンに用いる荷役機器をマテハン機器と呼びます。手持ちで使う小さな道具から大型機械まで、その種類はさまざまです。
物流業界では、EC市場の成長に伴い荷量が増加している一方で、深刻な人手不足が課題となっています。こうした問題が背景にあり、物流現場のマテハン機器導入の需要が増えています。
物流現場では主に、以下5つの作業に適したマテハン機器の導入が求められます。
- 積み込み作業
- 倉庫内の運搬作業
- 仕分け作業
- 保管作業
- 出荷作業
積み込み作業
例えば、下記のようなマテハン機器が導入できると、積み込み作業の省人化や効率化が可能です。作業の一部を機械化するだけでも、現場の負荷を軽減できます。
マテハン機器 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
フォークリフト | 高所にあるパレットを下ろす、格納する |
・専用免許が必要のため、運転手が必要 ・荷物の移動、積み込み作業を省力化する |
パレタイザ | パレットに自動で荷物を積み上げる |
・機械式、ロボット式がある ・人の力を使わず荷物を積載できる |
デパレタイザ | パレットに積載されている荷物を自動で積み下ろす、コンベアに載せる | ・コンベアと組み合わせて積み下ろしや運搬を効率化する |
ドッグレベラー | トラックの荷台やコンテナと搬出口の床の高低差をなくす |
・機械式、エアー式、油圧式、簡易式など種類が豊富 ・フォークリフトの積み下ろしが効率化する |
バンニングシステム | コンテナへの荷物の積み込みを自動化する | ・手作業やフォークリフト作業を削減する |
デバンニングシステム | コンテナからの荷物の積み下ろしを自動化する | ・手作業やフォークリフト作業を削減する |
倉庫内の運搬作業
マテハン機器の導入により運搬作業の人員が削減できるため、別の作業に人員を配置することも可能になります。例えば、下記のようなマテハン機器が挙げられます。
マテハン機器 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
コンベア | 倉庫内で荷物を輸送する |
・ベルト式、チェーン式、ローラー式、ねじ式などがある ・積み込みや仕分けなど、他の作業と連結して利用する |
無人搬送車(AGV) | 床に設置した磁気テープや磁気棒に沿って荷物を運ぶ |
・無人走行により運搬の人員を削減できる ・コンベア型、重量級型、低床型など用途に応じた種類がある |
自律走行搬送ロボット(AMR) | 倉庫内を自動走行し荷物を運搬する |
・AIによる自律走行により運搬の人員を削減できる ・無人搬送車と異なり、磁気テープや磁気棒が不要 |
天井走行車 | 天井のレールに沿って自動で荷物を運搬する |
・倉庫内上部の空きスペースを活用できる ・運搬以外の仕分けやピッキングにも活用できる |
仕分け作業
仕分けは手作業が多い傾向にありますが、マテハン機器の導入により作業の一部を自動化することが可能です。これにより作業時間を短縮できると、より多くの荷物を受け入れることができます。
マテハン機器 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
ソーター | 荷物を自動で仕分ける |
・クロスベルト式、ポップアップ式など種類が豊富 ・コンベアと組み合わせること、更なる効率化が可能 |
オートラベラ | コンテナや荷物に 自動でラベルを貼り付ける |
・手作業のラベリング作業を自動化できる |
保管作業
保管に用いる棚やラックを自動化するマテハン機器を導入できると、保管作業に関わる人員削減や省力化を実現できます。さらに在庫管理においては、自動化により人的ミスによる在庫差異も削減できます。
マテハン機器 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
自動倉庫 |
・パレットやコンテナ、段ボールなどを自動で保管棚に運ぶ ・仕分けができる種類もある |
・保管棚に荷物を運ぶ以外に、適切な位置に仕分けられる ・ピッキングを効率化できる |
移動式ラック | 床に設置したレールに沿って移動し、スペースを最大限に活用して保管する |
・棚を隙間なく設置できるためスペースを最大限に活用できる ・手動式、電動式などの種類がある |
出荷作業
出荷前に行うピッキングは、細かい作業のため手作業で行うことが多く、人的ミスが少なくありません。マテハン機器を導入できるとシステム化されるため、人的ミスが削減できます。
マテハン機器 | 役割 | 特徴 |
---|---|---|
自動ピッキングシステム | 保管場所の表示器が点灯し、適切な保管場所を示すことでピッキング作業を補助する |
・ピッキング作業を省力化する ・人的ミスの削減に貢献する |
ケースフォーマー | 自動で畳まれた段ボールを開き、テープを貼り付ける | ・梱包、包装作業を補助し、省力化につながる |
DSWシステム | 荷物をスキャンし寸法や重量、バーコードを読み取る |
・出荷を効率化する ・誤出荷を防ぐ |
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3マテハン機器導入のメリット
マテハン機器を導入することで、以下4つのメリットが生まれます。
- 省人化
- コスト削減
- 人的ミス削減
- 生産性向上
省人化
マテハン機器の導入によって、人による作業負担が軽減されるため業務効率が上がります。
また、最低限確保すべき人員の数も減るため、省人化につながります。深刻化する人手不足の課題解決にも貢献し、減った分の人員を販促などのコア業務に充てることができるようになります。
コスト削減
大規模な物流現場では必要となる人員の数も多いため、マテハン機器の導入により省人化ができると人件費などの削減が可能です。さらに、作業効率が上がることで残業が減り、そのコスト負担軽減も期待できます。
ただし、マテハン機器の導入には多大な費用がかかるため、費用対効果のシミュレーションをしたうえで導入を検討しましょう。
人的ミス削減
手作業がマテハン機器により自動化できることで、人的ミスに関わる作業工数が削減できるだけでなく、人員や時間に余裕が生まれるため、作業効率や生産性も向上します。特にミスが起きやすいピッキング作業にマテハン機器を導入できると、効果を実感しやすいでしょう。
さらに、危険な作業をマテハン機器に任せることでケガなどの事故も削減できるため、従業員の環境改善にも繋がるため、離職防止の効果も期待できるでしょう。
生産性向上
マテハン機器の導入により作業効率が上がると、対応できる荷量が増加し生産性も向上します。これにより売上が上がれば、事業規模の拡大にも繋がるでしょう。
4マテハン機器導入のポイント
マテハン機器を自社導入する際は、以下4つのポイントを押さえましょう。
- 自社に適した機器の選定
- 費用対効果のシミュレーション
- 補助金・減税制度の活用
- (自社導入が難しい場合) 物流のアウトソーシング
自社に適した機器の選定
マテハン機器を検討する際に、導入によって解決したい課題を洗い出し、優先順位を定めたうえで、課題解決に適した機器を比較検討します。
さらにマテハン機器の導入により、どのような効果が得られるのかシミュレーションを行い、導入後に「効果を見込めなかった」とならないように、慎重に検討を重ねましょう。
費用対効果のシミュレーション
マテハン機器の導入による費用対効果についても、事前にシミュレーションが必要です。
<費用対効果のシミュレーションの例>
- 人件費はどのくらい削減できるのか
- 導入費を何年で回収できるのか
- 維持費・管理費はどのくらいかかるのか
- マテハン機器の動力を人件費に換算するとどうなのか
事業規模が小さい場合の自社導入は、費用対効果を見込めないケースがほとんどです。そのため、後述する物流アウトソーシングを活用した方が、コストパフォーマンス高く運用できる可能性があります。
マテハン機器は買い切りだけでなく、リースやレンタルサービスも活用できるため、予算に応じて適切な手段をとりましょう。
補助金・減税制度の活用
マテハン機器の導入には、国や地方自治体による補助金・減税制度が活用できる場合があります。代表例は、以下の通りです(2023年8月現在)。
補助金・減税制度 | 概要 |
---|---|
二酸化炭素排出抑制対策事業費等補助金(建築物等の脱炭素化・レジリエンス強化促進事業) | ・建築物等のZEB化、レジリエンス強化、及び様々な業務用施設等の二酸化炭素削減を目的とした補助金制度 ・「自立型ゼロエネルギー倉庫モデル促進事業」が補助対象となる |
革新的ロボット研究開発等基盤構築事業 | 業務プロセスや施設環境等のロボット導入の推進を補助する補助金制度であり2024年までの実施 |
省エネルギー・需要構造転換支援事業費補助金 | ・エネルギーコスト高騰を受け、省エネ型設備をサポートする補助金制度 ・設備の更新費用として活用できる |
中小企業投資促進税制 | 機械等等設備の取得価額の30%の特別償却か7%の税額控除、どちらかを選べる減税制度 |
中央企業等経営強化法による支援 | 設備投資等の取組を記載した「経営力工場計画」を申請し、認定されることで中小企業経営強化税制や金融支援が受けられる制度 |
補助金・減税制度は、年度によって実施期間や内容が変更される場合があるため、必ず関係機関から情報を取得するようにしましょう。
(自社導入が難しい場合) 物流のアウトソーシング
マテハン機器の導入目的は、人的リソースが足りない、作業効率の改善が必要などの課題解決ですが、自社導入が難しいと判断した場合は、物流業務のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。
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5マテハン機器導入の課題
マテハン機器の自社導入にも課題があります。主に、以下2つが挙げられます。
- 機器トラブルの発生
- 導入コスト
機器トラブルの発生
マテハン機器は、経年とともにトラブル発生リスクが高まり、業務停止の恐れがあります。
トラブルを未然に防ぐためには、定期的なメンテナンスが必要です。また、トラブル発生時の対策を定めておくことで、早急な対応ができるでしょう。
導入コスト
大型のマテハン機器の導入は多大なコストがかかるため、上述したように、小規模事業者にとって自社導入のハードルが高いことも課題の1つです。
補助金や減税制度を活用する方法もありますが、自社導入をしない方法(物流のアウトソーシング)もありますので、適切な方法を選択できるように、慎重な検討が必要です。
6まとめ:マテハン機器を導入して作業を効率化しよう
マテハン機器の導入により、物流現場の業務を自動化することで、生産性や売上の向上が見込めます。従業員の負担が減り、働く環境が改善できれば、貴重な人員の離職防止にもつながります。
ただし、さまざまな理由で自社導入が難しいと判断した場合は、物流業務をアウトソーシングすることも検討しましょう。
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