人手不足が進む物流の現場では、効率化が喫緊の課題です。近年は、長年手作業で行ってきた作業を物流システムで代替する動きが目立つようになりました。
物流システムを導入すると、物流の現場はどのように変わるのでしょうか。
本記事では、物流システムの概要と種類、メリット・デメリットについて解説します。
目次
物流アウトソーシングの
検討時期やポイントを解説!
※委託先選定チェックリスト付き
1物流システムとは
物流システムとは、物流現場で行われる一連の作業プロセスを一元的に管理し、効率化と正確性の向上を図るためのシステムです。
具体的には「輸送」「保管」「荷役」「包装」「流通加工」の5つと、「情報」を管理します。
物流システムには、大きく分けて「クラウド型」「パッケージ型」「カスタム型」の3タイプがあります。
- クラウド型:オンラインで提供されているサービスを、必要な分だけインターネット経由で利用するもの。
- パッケージ型:ベンダーが開発した、機能が固定されたソフトを購入してPCにインストールするもの。いくつかのプランからサービスを選択するのが一般的。
- カスタム型:業務の中でシステム化が必要なポイントごとに、それぞれで必要となるシステムだけを導入するもの。
2物流システムの種類
物流の作業工程は多岐にわたり、システムがカバーできる範囲も広範です。
相互に影響し合う輸送や保管、情報といった6つの要素を包括的に管理するシステムもあれば各工程に特化したシステムもあります。
物流システムの種類としては、下記の7つが代表的なものとして挙げられます。
WMS
WMS(Warehouse Management System)は倉庫管理システムとも呼ばれ、倉庫内の業務効率化を目的とし、貨物・資材・商品の入出庫管理や在庫管理だけでなく、倉庫内の人員配置や請求管理などの機能を搭載したシステムです。
WMSを導入すると、商品の多さとやるべきことの多さで煩雑になりがちな倉庫内作業を整理し、正確に管理できるようになります。人の手による作業で生じていたエラーやトラブルを防ぎ、作業にかかる時間を削減することができるでしょう。
余剰在庫などの無駄をなくし、在庫回転率の向上にも役立ちます。
WMSは、主に下記の4つの機能を備えています。
1. 入庫管理
WMSでは、入庫数・入庫予定日・商品の種類などの情報を管理することが可能です。倉庫内の無駄をなくすスペースの有効活用や、検品の効率化と正確性向上に欠かせない機能です。
2. 棚卸管理
在庫をかかえる企業では、1年に1~数回程度、倉庫内にある商品の実数と帳簿の数を照らし合わせる棚卸を行います。WMSは、棚卸に必要な指示書の作成、棚卸後の報告などをサポートします。
3. 在庫管理
WMSでは、倉庫内の在庫の位置・数量・種類・製造年月日・使用期限などの情報をリアルタイムで把握・管理することも可能です。「在庫があると思ったら無かった」「在庫切れで失注したのに実際はあった」といった販売機会の損失を防ぎます。
4. 出荷管理
出荷管理とは、商品を発送する際に必要な伝票の作成・ピッキング・梱包作業などのことです。WMSでは、出荷時のピッキングリストを作成する機能なども搭載されているため、これらの作業効率化に役立ちます。
TMS
TMS(Transport Management System)は、輸配送管理システムとも呼ばれ、商品が倉庫を出てから消費者の手に届くまでの作業と情報を一元管理するシステムです。
出荷から配送が完了するまでのプロセスを可視化し、より効率的な積載やルート選択につなげます。配送状況がリアルタイムでわかるため、配送時間の変更などにも柔軟に対応できます。
在庫管理システム
在庫管理システムは、入出庫・受発注・配送の各業務が円滑に進むように、倉庫内のみならず、倉庫外にあるものも含めて商品の在庫を管理するシステムです。
在庫管理を紙ベースの管理表や伝票などで行う場合に比べて大幅な効率化が実現できるだけでなく、「記入する数値の書き間違い」「管理表の紛失」などのトラブルを防止できます。
常に最新の在庫情報を把握できるため、在庫切れや余剰在庫などのリスク低減にもつながります。複数拠点にある在庫を包括的に管理することも可能です。
運送管理システム
運送管理システムとは、荷物を載せて運行しているトラックなどに対して、本部からリアルタイムで指示を出せるシステムです。無駄のない運行ルートの計画のほか、ドライバーに負担のないように割り振ったシフトなど、運送に関わるすべてのことを管理します。
マテリアルハンドリングシステム
マテリアルハンドリングシステム(Material Handling System:MHS)は、商品の運搬にフォーカスして、その取り扱い方法を合理化することで生産性向上を目指すシステムです。マテハン機器と呼ばれる機器を使って、作業の効率化を図ります。
マテハン機器として代表的なものは、フォークリフト、パレット、ベルトコンベア、台車、搬送用ロボット、ピッキングロボットなどが挙げられます。
ピッキングシステム
出荷や加工に際して、棚などに積まれている商品を作業場に集める行為をピッキングといいます。手作業によるピッキングでは、倉庫内で目的の商品を探す作業にかなりの時間を費やさなければなりませんでした。
ピッキングシステムは、バーコードやRFIDタグを読み取って在庫の在り処を可視化するハンディターミナルなどを使用して、ピッキング業務を大幅に効率化します。
EDI
EDI(Electronic Data Interchange)とは、受発注・出荷・納品など、紙の書類や帳票で行われていた企業間の情報共有を、電子データでやりとりするための仕組みです。
アナログ処理とは異なり、伝達する人の記入ミスや言い間違いなどが軽減します。
物流アウトソーシングの
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3物流システムを導入するメリット
物流システムの導入は、企業に大きなメリットをもたらします。
下記の4点は、物流システム導入で得られる効果の中でも、代表的なものです。
物流業務の見える化
物流システムを導入することで、商品の仕入れから納品に至るまでの一連の作業工程について、商品の流れや作業の進捗を見える化できます。
一つひとつの作業が適切か否かを見直し、社内業務を最適化することができるでしょう。在庫が過剰になりがちな商品や不要な業務の存在が判明すれば、利益への貢献も期待できます。
業務効率化
物流システムを導入することで、人の目と手による確認・運搬・ピッキングなどの作業が自動化され、作業スピードが速まる上にヒューマンエラーも削減可能です。
これまで、ベテランの経験と勘に頼っていた作業が、物流システムの導入により自動化・標準化されれば、経験の深浅にかかわらず誰もが一定レベルで作業ができるようになります。
また、倉庫作業に従事していた人員を、本人の能力や意欲に応じて、よりコアな業務に配属することも可能です。
コスト削減
物流工程にシステムが入り効率化されると、生産性が向上します。
これまでより少ない労力、かつ短時間で大きな成果が出せるようになり、コスト削減と売上の増大が期待できます。
顧客対応の品質向上
物流システムを導入することで、対象商品の現在地をリアルタイムで把握できるようになります。すると、消費者から商品の到着についての問い合わせがあった場合にも速やかな対応が可能となり、顧客満足度も向上します。
また、物流システムを用いて、消費者が希望する配達時間に応じてフレキシブルに配送ルートを組むことができれば、よりスピーディーな配送も可能になるでしょう。
4物流システムを導入するデメリット
メリットの多い物流システムですが、デメリットもあります。
導入に踏み切る前に、少なくとも下記の2点は念頭に置いておかなければなりません。
費用がかかる
物流システムの導入には、当然ながら費用がかかります。
自社の予算と、システム導入にかかる初期費用およびランニングコストを算出し、無理のないものを選んでください。
システムを使いこなすための準備や研修が必要になる
せっかく新しいシステムを導入しても、機能や使い方がわからなければ活用できません。
そのため、システムの導入を検討している段階から、実際に使用する従業員の声を聞くことが大切です。「どの作業を、どのようにシステム化するのか」「システム導入によって実際にどのような作業が発生することになるのか」などを、事前に検討する必要があります。
もし、従業員の多くが「使いづらい」と感じるようなら、ほかのシステムと比較検討することをおすすめします。
また、物流システムは導入したら終わりではありません。熟練の従業員ほど従来の作業からスムーズにシフトできずに混乱する可能性が高いため、適宜研修を行うなど、フォローする必要があります。
5まとめ:物流システムがマッチしない際はアウトソーシングも視野に入れよう
物流システムを導入すると、顧客満足度の向上や業務の効率化、コスト削減など、さまざまな効果が期待できます。自社の物流課題を洗い出し、課題に即したシステムを選びましょう。
物流システムを導入しても従業員への浸透が心配な場合や、過去にシステム導入がうまくいかなかったなどで不安がある場合は、物流業務のアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。
当社では、物流課題の解決を目指す企業に向けて、最適な解決策となるアウトソーシングサービスをご提案しています。ぜひお気軽にお問い合わせください。
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