人力に頼った作業が多い物流の現場では、非効率な作業が今なお多く、ヒューマンエラーの原因になっています。
人手不足が進む中、物流業務の効率化の重要性は増しており、業務の進め方や作業環境に改善すべき点があれば、迅速な対応が必要です。
本記事では、物流の現場改善に取り組む際のポイントを解説します。
併せて、実際の改善事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
目次
物流アウトソーシングの
検討時期やポイントを解説!
※委託先選定チェックリスト付き
1物流の現場改善の考え方
「作業が非効率で、無駄が多い気がする」「きちんとチェックしたはずなのに、うっかりミスが多発して作業が停滞する」など、物流の現場作業に課題を感じている企業は少なくありません。
しかし、物流業務のプロセスは複雑で多様なため、作業に従事する人はもちろん、統括担当者でも、物流業務の「何を」「どのように」改善すればいいのかがわからないという事態も発生する傾向があります。物流の品質が企業の信頼に直結することもあるため、そのような事態はできる限り早急に解決しなければなりません。
物流の現場改善に取り組む際には、いくつかの基本となる方針があります。下記の6つの考え方を意識すると、効果的な改善策を実践できる可能性が高まります。
3Mを減らす
非効率な物流業務の根本には、ムリ・ムダ・ムラの「3M」があります。この3Mが発生していないかを確認していくと、物流現場の改善策が見つかることがあります。
ムリ
ムリが発生している状態とは、作業員一人ひとりの仕事量がキャパシティを超えていることです。個人の能力を超えた作業を任せているため、経験・スキルの不足から判断を誤ったり、注意力が散漫になったまま業務を遂行してミスが発生したりします。
ムダ
時間やコストが必要以上にかかってしまう状態がムダです。さばききれない量を仕入れる過剰仕入れや、それによって起こる余剰在庫、本来なら必要のない在庫管理の手間などは、その最たる例といえます。
作業が増加することによって雇用する人も増えるため、人件費の無駄も増大します。
ムラ
ムラとは、ムリとムダが蓄積することによって、安定的な作業を行うことができなくなっている状態です。担当者によって作業時間や品質にばらつきが生じているような場合で、顧客満足度の低下を招きます。
3Mが発生する原因は、自社の物流業務に対する理解不足などから、作業量に対して適切な人員を配置できていないことなどが挙げられます。特に、繁閑の差がある物流の現場では、常時必要な人員と緊急時に必要な人員とのバランスのとり方が難しく、結果的に限られた人員で膨大な作業をこなすという状況に陥るケースが多く見られます。
在庫管理システムやWMS(倉庫管理システム)、バーコード読み取りで検品作業が完結するハンディターミナルの導入など、人力による作業をシステムや機器で代替することで、3Mをなくし人員配置を最適化できます。
ヒューマンエラーを減らす仕組みを導入する
物流現場の作業の多くは手作業で行われているため、どんなに注意していてもヒューマンエラーが起こる可能性があります。
特に多いのが、ピッキングミスや、配送伝票の記入・確認ミスによる配送先の取り違えです。こうしたヒューマンエラーは、2人1組で作業するダブルチェックの導入や、ハンディターミナルの活用などによって改善が見込めます。
物流工程を適切に管理する
物流の効率化を妨げ、品質を低下させるトラブルの種は、普段何気なくこなしている日常業務の中に潜んでいるものです。
物流業務のどこで、どのようなトラブルが発生しているのか、誰がどのように関与しているのか、あるいはシステムや仕組みの問題によるものなのかを把握することで、再発防止につながる適切な対処をすることができます。
物流工程を適切に管理するためには、作業工程ごとに細かく記録を取り、作業内容を可視化する必要がありますが、この作業に時間がかかっていては本末転倒です。作業記録のデジタル化を含めて、物流工程の管理方法の最適化から始めることをおすすめします。
なお、改善策を実施した後は必ず効果検証を行い、同じようなトラブルが繰り返されていないか、起きているとすればどこに問題があるのかを再検証して、PDCAサイクルを回すことが大切です。
作業を効率化する
作業効率を向上できるポイントは、さまざまな工程に存在しています。入庫から出荷までのあらゆる作業内容を洗い出し、効率化できるポイントを探しましょう。
下記のような視点を持って業務を見直すと、効率化のヒントが見つけやすくなります。
<作業効率化のための業務見直しのポイント>
- 作業を単純化できないか
- シンプルな動線を確保できているか
- 人力の作業を機械やシステムで代替し、自動化できないか
- より視認性を高められないか
- レイアウトに無駄がないか
- マテハン(マテリアルハンドリング)が最適化できているか
上記のうち、マテハンとは物流業務の中での商品の保管・運搬・移動に関する取り扱いのことです。マテハンに使用される機器を「マテハン機器」といい、フォークリフト、ピッキングカート、コンベアなどが該当します。
これらをうまく取り入れて活用することで、入庫・運搬・仕分け・保管・出荷といった物流工程における商品移動の効率化が可能です。
物流コストを削減する
物流コストの大半は、輸送費・運送費が占めています。それ以外の多くを占めるのが、保管費や倉庫内の作業に関係する管理費と人件費です。特に、物流管理に関する費用の多くは人件費であり、人員配置や作業の調整などによって削減できる可能性があります。
例えば、出荷量にかかわらず一定の人員が配置されている、作業に繁閑の差があるにもかかわらず担当者の数が固定化されている、などで人が稼動しない無駄な時間が発生すると、不要な人件費を発生させてしまいます。担当者を固定せず、1人の担当者が複数の業務を担当できるようにして、フレキシブルに人員調整できる体制を作りましょう。
また、出荷量に対して拠点数が適切かどうかも確認したいポイントです。商品数に対して拠点数が多くなりすぎると、本来不要な拠点間での輸送費が発生している可能性があります。
とはいえ、複数の拠点があることで、配送リードタイムを短縮できるなどのメリットもあるため、自社にとって本当に必要な拠点数はどれくらいか、客観的に分析しなければなりません。
物流アウトソーシングを活用する
現場でできる改善策を実践してもあまり効果が見られない場合や、自分たちで改善を図る余裕がない場合は、物流アウトソーシングによって物流業務を丸ごとプロに任せるというのも1つの方法です。
物流に関して豊富な知識と経験を持つ専門家に一任することで、物流業務の効率化と品質の向上を両立することができます。結果としてコスト削減につながる可能性もあるため、できるだけ労力をかけずに理想的な物流を実現したい場合におすすめです。
物流アウトソーシングの
検討時期やポイントを解説!
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2物流の現場改善の事例
実際に、物流アウトソーシング企業であるスクロール360が物流の現場改善を実施し、効果を出した企業の事例を2つご紹介します。
物流の現場改善にご参考ください。
衛生用品業者の事例:拠点の移転で顧客満足とリピート率を向上
衛生用品業者であるA社では、倉庫での誤出荷が多く、クレームや問い合わせが多発して日常業務を圧迫していました。企業、および商品の信頼性にも関わる事態だったため、物流の現場改善が急務だったということです。
そこで、物流品質が高く誤出荷が起きにくい体制を実現できる物流業者を探して、これまでの拠点からスクロール360の拠点に移転しました。その結果、特に下記の2点で大きな改善を実現しています。
移転後は、クレームや問い合わせの数が大幅にダウン
検品作業などはより丁寧に、正確性を第一に考えて行うことで、物流の業務品質の向上に注力。消費者からのクレームやネガティブな問い合わせの件数が大幅に減少しました。注文したとおりの商品が質の良い状態で届き、顧客満足度の向上に成功しています。
個別の同梱物対応でリピートが増加
当社の関連会社の通販事業で行われているノウハウを活用して、同梱物に対する消費者からの評価を得ることを目的とした、グループインタビューも実施しました。
初めて購入した顧客から、毎月多額の買い物をしてくれる優良顧客まで、顧客のステータスに応じて求められている情報を盛り込んだ同梱物を入れられるようになり、顧客満足度とともにリピート率が向上しました。
化粧品業者の事例:2拠点体制を導入しリードタイム短縮やBCP対策を実現
東日本に拠点を置く化粧品業者のB社では、西日本の顧客も多く、どうしても西日本への配送リードタイムが長くなっていました。
顧客からの改善要望があったことから、スクロール360に相談があり、東日本と西日本に1ヵ所ずつ拠点を置く2拠点体制を導入したところ、下記のような効果がありました。
配送リードタイム・配送コストの削減
近い拠点から西日本への配送ができるようになったため、リードタイムの大幅な削減に成功しています。これに伴い、西日本への配送で発生していたコストも大幅に削減されました。
災害時のBCP
BCP(事業継続計画)とは、自然災害・大火災・テロ攻撃・システム障害・感染症の流行といった思わぬ緊急事態に遭遇した場合に、被害をできる限り抑え、事業を継続するための計画です。2拠点になったことで東日本と西日本の拠点のいずれかに不測の事態が起きた場合には、もう片方の拠点でカバーできるようになり、事業を止めない対応ができるようになりました。
波動対応がスムーズに
物流ニーズの上下に合わせて適切な人員を配分することを、波動対応といいます。波動対応は生産性と顧客満足度を高める上で非常に重要です。2拠点体制の導入後は、一方の拠点の繁閑差に応じてもう一方の拠点から人員を融通することで、スムーズに波動対応ができています。
3まとめ:ポイントを把握し物流現場の業務改善に取り組もう
効率的で高品質な物流を目指して、多くの企業が物流の現場改善に取り組んでいます。
普段当たり前に行っている作業にも改善ポイントが潜んでいる可能性があるため、上記で解説したポイントを参考に、ぜひ自社の物流業務を見直してみてはいかがでしょうか。
改善のネックになっている部分が見つかった際には、物流アウトソーシングをはじめとした対策に取り組むことをおすすめします。
当社では、これまで多くのEC通販事業者様の物流業務を代行し、課題を解決してきました。物流現場の改善にお悩みの場合は、お気軽にご相談ください。
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