アップセルとは、より高額な上位商品を提案し顧客単価を上げるセールス手法です。アップセルを行うことで、生涯顧客単価や顧客満足度の向上、長期的な売上アップも期待できます。新規顧客の獲得よりもコストや労力をかけずに効果を得られるため、業務効率化にも繋がるでしょう。
本記事では、アップセルの概要やクロスセルとの違い、具体的な方法などを紹介します。成功するためのポイントについても見ていきましょう。
目次
ECの売上アップに繋がる「多店舗展開」、
メリットや成功の秘訣を具体例と共に解説!
1アップセルとは
アップセルとは、顧客単価を上げるために、より高額な上位商品の購入を促したり、無料版から有料版への切り替えなどを顧客に提案するセールス手法のことです。高性能な商品を顧客に紹介することで、顧客満足度を高めることも可能です。
アップセルでは、顧客単価を上げる方法として以下のような提案が行われます。
- 上位商品や高級品
- 定期購入
- まとめ買い
このように、より高い商品や複数購入を顧客にメリットがある形で提案し、顧客単価の向上に繋げていきます。
クロスセルとの違い
アップセルは、顧客が検討している商品よりも高額な上位商品を提案します。反対にクロスセルは別の商品をセットにしたり、単体で購入してもらうための手法です。
具体的には、以下のような違いがあります。
- アップセル:商品のアップグレード
- クロスセル:セット売り
このように、アップセルとクロスセルのどちらも顧客単価を上げる手法ですが、提案内容が異なります。取り扱い商品や顧客ニーズに合わせて、手法を使い分けることで効果的に顧客単価を向上させることが可能です。
2アップセルのメリット
アップセルのメリットには、以下の4つがあげられます。
- 購入単価が向上する
- 生涯顧客単価(LTV)が向上する
- 顧客満足度が向上する
- 新規獲得よりも労力がかからない
購入単価が向上する
アップセルを行う目的の1つは、顧客の購入単価を向上させることです。新商品や新サービスの展開、新規出店などをしないで購入単価を上げたい場合に使われます。
アップセルでは、低コストで既存顧客の購入単価を高めることが期待できるため、利益の増加も見込めます。単に商品を売って終わりではなく、購入後のフォローも丁寧に行うことで、次回購入時の単価を高めることにも繋がります。
生涯顧客単価(LTV)が向上する
生涯顧客単価とは、1人の顧客の取引開始から終わりまでの期間内で、その顧客がもたらす損益を累計して算出したマーケティングの成果指標のことです。
計算式「顧客平均購入単価 × 平均購入回数」で求められ、アップセルで購入単価が上がることで生涯顧客単価の向上にも繋がります。
顧客満足度が向上する
アップセルでは、既存顧客に上位のプランや商品を提案して使い続けてもらうことで、質の高いサービスを継続して提供できます。顧客のニーズに適した提案ができると顧客満足度の向上が期待できます。
顧客満足度の向上により継続購入に発展すると、さらに高機能の商品や高額商品にアップグレードの提案を行うこともできるため、生涯顧客単価の向上にも繋がります。ただし、ニーズを考慮せずにむやみに提案をしていると、顧客離れに繋がってしまうため注意が必要です。
新規獲得よりも労力がかからない
新規顧客を獲得するためには、広告の出稿費や集客施策の工数が発生し、携わる社員の労力も増えることになります。しかしアップセルは、既存顧客にアプローチをして顧客単価を上げる手法であるため、新規顧客獲得よりもコストや労力がかかりません。
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3アップセルを行う際のポイント
アップセルを行う際のポイントは、以下の3点です。
- 顧客目線で考える
- データを分析して提案する顧客を見極める
- 顧客が求めている商品を提案する
顧客目線で考える
アップセルは既存顧客の単価を上げるためのものですが、目先の売上だけでなく、顧客のロイヤリティを上げて継続的に購入してもらうことが最も重要です。
アップセルを行う際には、顧客がどのようなことにメリットを感じ、どのような機能が喜ばれているかなど、顧客情報や反響などから分析し、ニーズを把握したうえでどのような伝え方をしたらメリットを最大限に感じてもらえるか、顧客目線で考える必要があります。
ニーズを把握するためには、アップセルの提案をする前に、顧客に対してアンケートを実施して生の声を聞く方法もあります。
データを分析して提案する顧客を見極める
アップセルを行う際には、顧客情報を把握し提案する顧客を見極めることが重要です。具体的には「購買履歴・閲覧履歴・行動履歴」の情報を確認することで、アップセルを行うべきか判断ができます。
たとえば、過去の購買履歴から、商品の買い替えを検討している時期と判断できる場合、アップセルを行う最適なタイミングです。
顧客が求めている商品を提案する
顧客のニーズに適した提案であれば、多少高額になる商品や、有料サービスへのアップグレードであっても購入してもらえる可能性が高まります。そのためには、顧客と密なコミュニケーションをとり、ニーズを把握してから提案することが重要です。
また、適切に提案するためには品揃えも重要です。例えば、下位・中位・上位と異なるグレードの商品を用意し、それぞれのメリットを伝えられる状態にしておくことで、顧客のニーズに沿った提案が可能になります。
4アップセルを行う際の注意点
アップセルを行う際には、以下の2点に注意が必要です。
- むやみに提案しない
- アフターフォローをする
むやみに提案しない
自社ブランドや商品イメージを損ねることにも繋がるため、顧客のニーズを無視した提案は避ける必要があります。むやみな提案は、信頼の低下や継続購入の停止などに繋がります。
商品ありきではなく、顧客のニーズに寄り添った提案内容を検討し、顧客にメリットを感じてもらえるかを判断できてから提案するようにしましょう。
アフターフォローをする
アップセルを行うと、顧客は今まで利用していた商品よりも高額な上位商品を購入するため、商品に対する期待値も高まります。そのため、適切なアフターフォローがないと顧客満足度の低下、結果として生涯顧客単価が低下してしまう可能性もあります。
それを防ぐためには、商品の使用状況の確認や不具合の有無など中心としたフォローや、有益な情報提供をするなどのコミュニケーションを通して、顧客との関係性を構築しましょう。これにより、新たなニーズが見つかり次の提案へと繋がるなど、顧客満足度の向上へ弾みをつけることができます。
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5アップセルの具体的な方法
アップセルを行うための具体的な提案は以下の3つです。
- 上位商品
- 有料へのアップグレード
- 割引付き商品
上位商品
アップセルには、顧客が購入している商品の上位商品を提案する方法があります。購入予定商品との違いや上位商品を購入するメリットを丁寧に伝えると、購入してくれる可能性が高まります。
たとえば、家電の購入を検討している顧客に対し、より多くの機能が搭載された上位モデルを提案していく方法などが当てはまります。ただし、的外れな提案を行ってしまうと、購入予定だった商品についても購買意欲がなくなる可能性もあるため、注意が必要です。
有料へのアップグレード
サブスクリプションサービスや、メールマガジンなどの無料サービスをアップグレードして有料プランに加入していただく提案もあります。ただ、安易に有料プランへ促すのではなく、アップグレードによって顧客が享受できるメリットを伝えることが重要です。
無料から有料プランへの提案だけでなく、高いグレードへの変更や長期プランへの変更を促す方法も効果的です。
割引付き商品
割引付き商品の提案は、化粧品をはじめとしたリピート商材に適した方法です。
高額な商品に割引を付けることで、より高いグレードの商品を購入してもらう機会を作れます。既存顧客に対してアプローチができるため、顧客のニーズに合わせた提案がしやすい方法であり、さらなる顧客満足度の向上も期待できます。
6アップセルの活用事例
アップセルの主な活用事例を見ていきましょう。
- Dropbox
- Spotify
- 東京ヤクルトスワローズ
Dropbox
Dropboxは、オンラインストレージにデータを保存できるサービスを提供している企業です。具体的には、企業規模に応じて使用可能容量別に価格プランを分けており、容量が足りなくなりそうな企業へアップセルを提案しています。
またDropboxでは、有料へのアップグレードだけでなく、紹介制度を利用してアップセルを行っています。紹介制度とは既存顧客が新規顧客を紹介すると、使用可能容量が増える制度です。これによりコストや労力をかけずに新規顧客を獲得でき、潜在的な売上増加が可能です。
Spotify
Spotifyは、端末を選ばずに、7,000万曲以上を無料で聴けるサブスクリプションを展開している企業です。無料版では、Spotifyのおすすめ曲が流れてくる仕組みになっており、1時間に6回までスキップすることができます。スキップの制限がかかった際に、有料プランへのアップグレードを提案し、アップセルを促しています。
東京ヤクルトスワローズ
プロ野球球団の東京ヤクルトスワローズは、ファンクラブ向けのアップセルを行っています。東京ヤクルトスワローズのファンクラブでは、以下の5つにクラス分けし、異なる特典を用意しています。
- キッズ会員
- ライト会員
- レギュラー会員
- ゴールド会員
- プラチナ会員
プラチナ会員限定でユニフォームをプレゼントするなど、上位の会員になるほど顧客のニーズを満たす特典を充実させることで、上位会員を増やしています。
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7まとめ:アップセルで売上を最大化しよう
アップセルとは、顧客が検討している商品よりも高額な上位品を提案するセールス手法です。購入予定品よりも高性能な商品を提案することで、より良いサービスが提供できるため、顧客満足度の向上にも期待できます。
アップセルを行うと、新規顧客の獲得よりも少ない労力で購入単価やLTV(生涯顧客単価)を上げることができますが、むやみに提案すると、最悪の場合は顧客離れに繋がる可能性があるため注意が必要です。
アップセルを行うためには、既存顧客のロイヤリティが高いことが重要であり、まずはリピート率を高めることも重要です。
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