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トレーサビリティとは?目的や重要性を事例と共に解説

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物流トレーサビリティとは?導入メリットや活用事例

トレーサビリティとは、製品の原材料から最終消費者に至るまでの各段階を追跡および記録する仕組みであり、消費者の安全確保、企業の業務効率化のために活用されます。 この概念は、品質管理やリスク管理、法規制の遵守において不可欠であり、製造業、食品業界、医療業界など、多岐にわたる分野で活用されています。

本記事では、トレーサビリティの概念と重要制を解説した後に、物流における導入メリットや課題、活用事例まで解説します。自社の物流にお悩みの方はぜひ参考にしてみてください。

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トレーサビリティとは?その概念と重要性

トレーサビリティとは、製品がどのように作られ、どこで流通して最終的に消費者に届くか、その全ての過程を追跡し、記録する仕組みのことです。例えば、あなたが食べている野菜がどこの農場で育てられ、どのような過程を経てスーパーに並んだのかを知ることができるのがトレーサビリティの仕組みです。

トレーサビリティを導入することで、流通過程で何か問題が起きたときに、その原因を迅速に特定して対処できるようになります。また、消費者はその製品がどのように作られたかを詳しく知ることで安心して購入できます。トレーサビリティは品質管理や安全性の確保に大いに役立つ、現代のビジネスにとって重要な仕組みなのです。

トレーサビリティがなぜ必要なのか?事例から学ぶ重要性

食品業界のトレーサビリティ事例

BSE(牛海綿状脳症)、通称「狂牛病」問題(2000年代初頭)
BSEは1980年代にイギリスで初めて確認され、その後他の国々でも発生し、日本では2001年に確認されたことで大きな社会問題となりました。この病気は牛の脳などの神経組織が変性し、最終的に死に至るもので、変異型として人間にも伝染する危険性が指摘されています。

ポイント

この問題を受けて、日本政府を含む各国政府は、畜産物のトレーサビリティを強化するための措置を取ることになり、その重要性を強く浮き彫りにした事例の一つと言えます。

トレーサビリティ強化の取り組み

BSE問題後、日本は2003年から牛の個体識別システムを導入し、全ての過程を追跡可能にしました。また、動物由来タンパク質を含む飼料の規制を強化し、成分を詳細に管理すると共に屠殺時のBSE検査を義務付け、全頭検査を実施しています。

(引用元:厚生労働省「牛海綿状脳症(BSE)について

医療分野のトレーサビリティ事例

アメリカの製薬会社のリコール(2010年)
2010年、アメリカの大手製薬会社の子会社が、約5,000万本のタイレノールやモートリンなどの医薬品をリコールしました。これは一部の製品が工場での製造過程で不良が見つかったためです。

ポイント

問題発覚後、製造ロット番号を利用して該当の製品を迅速に特定し、流通ルートを追跡して消費者や医療機関にリコール通知を徹底することで速やかに回収を行いました。これらの対応ができたのもトレーサビリティの仕組みを導入していたからと言えます。

トレーサビリティの種類

トレーサビリティは、追跡範囲によって以下の2種類に分けられます。

トレーサビリティ(イメージ)
  • チェーントレーサビリティ
  • 内部トレーサビリティ

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティとは、製造から倉庫管理、出荷、消費までのサプライチェーン全体の商品の動きを追跡できることです。

消費者は「どこで・どのように」商品が製造されて手元に届いたのか、という履歴を確認することができ、EC通販事業者側はどのようなプロセスを経て消費者に商品が届けられたのか、という履歴を確認できます。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティとは、企業内あるいは工場内で商品・材料の動きを追跡できることです。これによって、各材料の最適な発注数量や、商品の最適な在庫数量を把握しやすくなり、余剰在庫不良在庫を抱えるリスクを抑えることができます。

なお、チェーントレーサビリティが製造会社・物流業者・消費者など、さまざまなステークホルダーとの情報連携を目的としているのに対し、内部トレーサビリティは製造会社内での商品データ管理を目的としています。目的によって、どのような形でトレーサビリティを導入するべきか検討することが重要です。

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物流におけるトレーサビリティとは?

物流におけるトレーサビリティとは、商品が製造されて消費・廃棄されるまでのサプライチェーン全体の過程を追跡できることを指します。

物流におけるトレーサビリティ(イメージ)

物流現場では、商品を「いつ・どこで・だれが・どのように」製造したのかという情報や、その後の在庫保管、出荷情報のプロセスを記録し、いつでも追跡できるようにするために利用されます。

物流においてトレーサビリティを導入するメリットは、出荷後の商品にトラブルがあった際に該当商品を特定して迅速に対応できることや、非効率な作業を特定して改善できることです。トレーサビリティはロジスティクスの管理において重要な要素のため、各社で導入の動きが進んでいます。

物流にトレーサビリティを導入するメリット

物流現場でトレーサビリティを導入する主なメリットは、以下の3つです。

物流現場のトレーサビリティ(イメージ)
  • トラブル時に迅速に対応できる
  • 企業の信用力が向上する
  • 物流業務の効率が向上する

トラブル時に迅速に対応できる

物流にトレーサビリティを導入することで、不良品の発生などのトラブル時に迅速な対応が可能となります。材料調達から製造、保管、配送までの商品履歴をすぐに把握できるためです。

たとえば、商品事故が認められてリコールが必要となった場合、トレーサビリティを導入していないと不具合のリサーチが広範囲に及ぶだけでなく、どの消費者に該当商品が渡ったのかを確認する作業に時間がかかり、最悪の場合は確認が困難となります。

一方でトレーサビリティを導入しておくと、消費者の手に渡った全商品のうち、どの商品が回収すべきものか分かるため、トラブルにも迅速に対応することが可能です。

企業の信用力が向上する

物流にトレーサビリティを導入することで、品質管理・トラブルに対するリスク管理の水準が上がるため、企業の信用力が向上するメリットがあります。

製造工程をトレーサビリティによって可視化することは、企業内部の透明性を高めてステークホルダーに説明責任を果たそうとする経営層の姿勢でもあり、消費者や株主にポジティブな印象を与えます。

一方で、トレーサビリティの確保は、個人情報を追跡することでもあるため、企業内での情報の取り扱いには細心の注意が必要です。品質管理・リスク管理の意識を高める一方で、個人情報保護にも注意して運用体制を整えていくようにしましょう。

物流業務の効率が向上する

物流へのトレーサビリティ導入は、ピッキングや在庫管理などの物流業務の効率が向上するメリットもあります。

たとえば、商品の入庫日時と保管場所を把握できるトレーサビリティを導入することで「倉庫内での商品滞留が原因で作業リードタイムが長くなっている」などの課題発見につなげることができます。発見した課題解決に集中してリソースを割くことで、倉庫全体の業務効率化が可能になります。

トレーサビリティ導入の課題

トレーサビリティの導入時には、以下の課題があります。

  • サプライヤーとの連携が難しい
  • 導入時にコストがかかる

サプライヤーとの連携が難しい

自社物流のトレーサビリティを確保できても、サプライヤー(製造業者・物流業者など)との連携が難しいという課題があります。トレーサビリティは、製造から出荷まで一貫した管理ができていないと効果は半減します。自社ですべての工程を賄っている場合を除いて、他社との連携は必須です。

一方で、一般的に企業はサプライチェーン全体の利益ではなく、自社利益を最適化しようとするため、トレーサビリティを管理するシステムへの連携に、サプライヤーの協力が必ず得られるとは限りません。

トレーサビリティを活用するためには、サプライヤーの利害を調整し、物流全体の最適化を図るリーダーシップが必要となります。

導入時にコストがかかる

最新のトレーサビリティシステム導入には、コストがかかります。
システム費用だけでなく、商品製造会社・物流業者間でデータ連携を行うためには、新たなシステム構築が必要となり、人的リソースとしてのコストも発生します。

また、物流現場にトレーサビリティシステムを定着させるために、業務フローの改定や現場研修も必要となります。このように、トレーサビリティシステムの導入に際しては、さまざまな手間・コストが発生するため、費用対効果についても検討する必要があるでしょう。

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物流におけるトレーサビリティの活用事例

トレーサビリティを実現する技術や、物流現場での活用事例を紹介します。

トレーサビリティ活用(イメージ)
  • ブロックチェーン
  • RFID(商品データの読み取り技術)

ブロックチェーン

分散型のデータ記録・管理ができるブロックチェーンは、もともとビットコインのような暗号資産で活用されていましたが、サプライチェーン・物流管理においても利用されつつあります。ブロックチェーンを導入することで、材料仕入れから商品製造、物流業者の商品発送までの物流情報を、すべて1つの帳簿で管理することが可能です。

ブロックチェーンの特徴の1つは、データ改ざんが難しい点です。膨大な商品および工程のデータを正確に記録し、信頼できるトレーサビリティを構築できることはブロックチェーンのメリットといえます。

RFID(商品データの読み取り技術)

RFID(Radio Frequency Identification)とは、商品に取り付けられたタグから非接触でデータを読み取る技術です。同じく商品データを読み取るバーコードと比較して、商品に近づいて1つひとつ対応する必要がないため、効率的に商品データを読み取れる点がメリットです。

RFIDを活用することでデータ管理が効率化し、物流におけるトレーサビリティの実現が期待されています。

まとめ:物流情報の一元化によってトレーサビリティを活用しよう

物流のおけるトレーサビリティを確保することは、企業内部で業務効率化を実現するだけでなく、外部からの信用力を向上させるうえでも極めて重要です。近年では、ブロックチェーンやRFIDなどのIT技術を活用し、物流現場にトレーサビリティを導入する取り組みが進められています。

当社は物流代行サービスの専門家として、物流に関する業務効率化をサポートしております。自社の物流業務にお悩みの方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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