EDIとはインターネットや電話回線を通じたデータ交換のことで、物流や金融、小売などさまざま業界で利用されています。EDIには各企業が共通で使用する規格があり、物流業界においても「標準EDI」が定められています。
EDIを導入することで、他社との情報のやりとりをスムーズで正確に実行できるようになり、作業ミスを減らすことも可能です。また、手作業が減るため工数の削減にも繋がります。
本記事では物流業界における標準EDIの解説、導入のメリット・デメリットを紹介します。
目次
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1EDIとは
EDIは「Electronic Data Interchange」の頭文字で、読み方は「イーディーアイ」です。
日本語に直訳すると「電子データ交換」という意味で、商取引に関わる情報を電子的にやりとりすることを指します。具体的には以下のような用途で使用されています。
- 受発注
- 出荷通知
- 代金決済
EDIを導入することで、異なる企業間でも同じフォーマットで電子データが利用できるようになるため、双方の業務がスムーズに進みます。企業間の電子取引は年々増加しており、今後も利用するシーンが増えていく可能性が高いといえます。
2物流業界における標準EDIとは
EDIにはいくつかの種類がありますが、物流業界における標準EDIは主に以下の2種類です。
名称 | 管理者 | 概要 |
---|---|---|
物流EDI標準 JTRN (ジェイトラン) |
物流EDI推進委員会が運営 (日本ロジスティクスシステム協会と日本物流団体連合会物流EDIセンターの共同運営) |
荷主企業と物流事業者の統一規格として利用されている |
物流XML/EDI標準 | 日本物流団体連合会が運営 | 無償で公開されているインターネット対応型の物流EDI規格 |
JTRN (ジェイトラン) は1977年に開発が始まった規格で、古くから物流業界で使用されてきました。一方の物流XML/EDI標準は、JTRNの後継として2014年に公開された規格となっており、インターネットを用いたやりとりがスムーズにできるようになっています。
個別EDIと標準EDIの違い
個別EDIと標準EDIの違いは以下のとおりです。
名称 | 内容 |
---|---|
個別EDI | ・会社ごとに個別の認識コードを利用する方法 ・形式の異なるコードの場合、変換を行う必要がある ・決まった取引先限定でやりとりをする場合は有効 |
標準EDI | ・異なる会社同士が共通のフォーマットを利用する方法 ・共通のEDIを利用することでデータ変換の手間がなくスムーズに利用できる ・標準規格を定めておくことで、複数の取引先とやりとりがしやすい |
標準EDIは業界ごとに定められており、例えば、物流業界の規格はJTRN、金融業界の場合はZEDIなどがあります。個々の会社の垣根を越えて、業界全体で標準EDIを設定することで、スムーズな電子取引ができるようになります。
標準EDIの要件
標準EDIの設定において取り決められている要件は、大きく分けて以下の4点です。
- 取引に関する規約(EDI取引契約)
- 業務運用に関する規約(運用ルール)
- 情報表現方法の規約(シンタックスルール標準メッセージ・コード)
- 情報伝達方法の規約(通信手順)
多くの企業が1つの規格を利用するため、混乱が起きないように細かく要件を取り決めておく必要があります。
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3EDI以外の物流IT化に関するシステム
EDIの活用によって物流現場の受発注や出荷業務をスムーズに行うことができますが、他にも業務の効率化を助けるシステムが存在します。
EDI以外の物流IT化に関するシステムとしては、EOSや流通BMSなどが代表的です。
それぞれの概要とEDIとの違いを、
以下で解説します。
EOSとの違い
EOSは「Electronic Ordering System」の頭文字をとった言葉で、読み方は「イーオーエス」です。EOSは発注業務に使われるシステムであり、データを読み取ることで仕入先に発注数を送信できる仕組みです。
EOSとEDIの違いと、その他の関連性の高い物流ITシステムについて、以下の表で解説します。
名称 | 内容 |
---|---|
EDI | 電子データによって発注・納品・請求など、広範囲の情報を送受信するシステム |
EOS | 電子データ送信によって発注処理をするシステム |
CRP | 購入数などをもとに、必要な数量を自動的に算出して納入するシステム 基本的には納入元が使用するため発注側の業務は軽減される |
CAO | 指定の在庫数を下回ると自動で発注されるシステム |
EOSは以下の3つの方法に分けられており、それぞれ専用の機器を用いて在庫管理と発注を行います。これらのシステムを適切に活用することで、作業ミスも軽減できるでしょう。
- 棚卸スキャン方式(商品のバーコードを読み取って発注する)
- オーダーブックスキャン方式(注文票を読み取って発注する)
- EOB方式(タブレット状の機器を用いて発注する)
流通BMSとの違い
BMSは「Business Message Standards」の頭文字をとった言葉で、「流通ビジネスメッセージ標準」とも呼ばれています。流通BMSはEDIの仕様を定めた規格の1つで、経済産業省の流通システム標準化事業によって2007年4月に制定されたものです。
これまでは「JCA手順」と呼ばれるプロトコルが用いられていましたが、インターネットの普及により古い規格が合わなくなる問題が出てきました。新しいガイドラインである流通BMSを取り入れることで高速通信が可能になり、文字や画像データがスムーズに送信できるようになりました。
EDIと流通BMSの違いは、以下のとおりです。
名称 | 概要 |
---|---|
EDI | 電子データのやりとりそのもの |
流通BMS | データをやりとりする際の標準仕様(基本となるもの) |
流通BMSを導入することでプロトコル(※) が標準化され、企業間のデータのやりとりが行いやすくなるメリットがあります。
※プロトコルとは、データをやりとりする際に定められた規格や手順の方法のこと
4物流現場にEDIを導入するメリット
物流現場にEDIを導入するメリットは以下の2点です。
- 業務を効率化できる
- 生産性が向上する
業務を効率化できる
物流現場にEDIを導入すると、書類や伝票作成の工数が減り業務効率化に繋がります。
これまで手作業で行っていた伝票や発注書も、すべて電子データをもとに発行することができるため、人的ミスの防止も可能になります。
また、発注書だけでなく納品・請求なども同様に対応できるため、会社全体の事務的負担を軽減させることができるでしょう。
生産性が向上する
受発注をスムーズに行うことで、ビジネスの商機を逃さないようにできる点もメリットです。すべての事務作業がスピーディーにできることで、例えば、競合他社よりも早い出荷に対応できるなど、差別化を図ることが可能です。生産性が向上することで、最終的には収益アップに繋がる可能性もあるでしょう。
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5物流現場にEDIを導入するデメリット
物流現場にEDIを導入するデメリットは以下の2点です。
- 導入には時間や手間がかかる
- システムトラブルのリスクがある
導入には時間や手間がかかる
EDIを導入する前には、事前に社内体制をしっかり整えておく必要があります。関わるスタッフへの伝達や教育が必要で、新しいシステムに慣れるまでは、ある程度の時間がかかることを理解しておきましょう。
今の運用から切り替えるには多くの手間と時間がかかりますが、導入のメリットも非常に大きいため、長期的な目線で考えるとプラスになることが多いでしょう。
システムトラブルのリスクがある
EDIの導入リスクとして考えられるのは、システムトラブルが発生する可能性があることです。例えば、インターネット回線のトラブルや機器の故障、停電などの場合は、EDIが利用できない可能性があります。いざという時に現場が混乱しないように、社内で対応ガイドラインを定めておくことが重要です。
6物流現場におけるEDIの導入手順
物流現場へのEDI導入を検討する際は、以下の委託先を探してみましょう。
- EDIの導入支援をしているシステム会社
- EDIに対応している物流会社
システム自体を扱っているIT系の会社か、物流業務の支援を行う物流会社に依頼することで、EDIの導入を進めることができるでしょう。
なかでも物流会社の場合は、さまざまな物流現場で運用している実績が豊富にあるため、柔軟なサポートを受けることができます。受発注や出荷業務まで幅広い支援を依頼したい場合は、物流会社にまとめてアウトソーシングすることをおすすめします。
7まとめ:EDIを導入して物流業務を効率化しよう
EDIを導入することで、他社との情報のやりとりをスムーズで正確に実行できるようになるため、大幅な業務効率化が期待できるでしょう。
EDIに限らず、物流現場のIT化は今後ますます増えていくことが予想されます。
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