循環棚卸とは、在庫の特徴(場所や種類などの基準)ごとに作業する日時を分けて棚卸し(実地棚卸)をする方法であり、すべての倉庫業務を止めずに実施できることがメリットです。
本記事では、循環棚卸の概要について解説した上で、具体的な作業手順やメリット、一斉棚卸との違いを紹介します。倉庫の在庫管理の担当者は、ぜひご参考ください。
目次
1循環棚卸とは
循環棚卸とは、在庫の特徴(場所や種類などの基準)ごとに作業する日時を分けて棚卸し(実地棚卸)をする方法のことです。棚卸しをする棚のみ商品の入出庫をストップするため、倉庫の全オペレーションを止める必要はありません。
棚卸し作業開始後は、実在庫数が確定するまで在庫の移動を行わないことが重要です。
循環棚卸では在庫の特徴(場所や種類などの基準)ごとに順番に棚卸し作業を行うため、サイクルカウントやサイクルカウンティングとも呼ばれています。
循環棚卸を行う目的
循環棚卸を行う目的は、倉庫の業務を停止せずに、自社の資産状況を正確に把握し、利益と税額を明らかにするためです。
棚卸しをする在庫を特徴(場所や種類などの基準)ごとに分けて順次行うことができるため、営業を続けて利益を上げながら棚卸し作業を行うことが可能です。ただし循環棚卸を正確にできないと、決算書の内容が実態と異なってしまうため、丁寧に作業を行う必要があります。
循環棚卸と一斉棚卸の違い
循環棚卸と一斉棚卸の違いは、以下のとおりです。
方法 | 作業方法 |
---|---|
循環棚卸 | 在庫の特徴(場所や種類などの基準)ごとに、順次棚卸しをしていく方法 |
一斉棚卸 | 倉庫のオペレーションをすべて止めて、すべての在庫を棚卸しする方法 |
循環棚卸と一斉棚卸の大きな違いは、倉庫のすべてのオペレーションを止めて一度に棚卸しするかどうかです。一斉棚卸しを行うときは、入出庫の業務をすべてストップするため、こちらの方が売上が一時的に落ち込む可能性が高くなります。
2循環棚卸の作業手順
循環棚卸を行う手順は、以下のとおりです。
- 棚卸実施計画を立てる(対象エリア、作業日毎に計画)
- 対象エリアの入出庫を停止する
- 対象エリアの「物理的な在庫(実在庫)」を確認する
- 上記3の在庫と「帳簿上の在庫(理論値在庫)」より在庫差異を算出する
- 棚卸差異に基づき、在庫数量を確定させる
- 対象エリアの入出庫を再開する
- 上記2から6を繰り返す
- 在庫差異の原因を究明し、改善策を検討する
最初に循環棚卸をどのように進めていくか計画を立てて、対象エリアから順次在庫をカウントしていきます。カウントミスがあった場合には再カウントを実施、理論在庫との差異があった場合は在庫差異を修正し、棚卸し作業が完了したら入出庫を再開します。
3循環棚卸のメリット
循環棚卸には、以下の3つのメリットがあります。
- 大規模な業務停止が不要
- 原因不明の在庫差異を防止
- 少人員で作業可能
大規模な業務停止が不要
循環棚卸では、在庫の種類や場所ごとに作業する日時を分けて棚卸しをするため、倉庫のすべての業務を止める必要はありません。
棚卸し作業を行う在庫以外は、入出庫業務を止める必要がないため、営業を続けて利益を上げながら実施できる点が、循環棚卸を行うメリットです。売上を落とさずに棚卸し作業を行いたい場合は、循環棚卸を選択しましょう。
原因不明の在庫差異を防止
定期的な循環棚卸によって、原因不明な在庫差異(帳簿上の在庫と実在庫が一致していない状態のこと)を防止することができます。在庫差異の発見を、早いタイミングで把握して対応できるからです。
大規模な在庫差異が発生してしまったときは、倉庫のすべての業務をストップして一斉棚卸を行う必要があり、売上が一時的に下がってしまう懸念もあります。
少人員で作業可能
循環棚卸では、在庫の種類や場所ごとに順次棚卸しをするため、少人数のスタッフでも作業することができます。そのため倉庫業務に人員を割くことができない場合や、一斉棚卸の作業スタッフを確保できない場合でも、循環棚卸であれば実施することが可能です。棚卸しに人員を大きく割く必要がなくなるため、人件費削減につながることも循環棚卸のメリットです。
4循環棚卸のデメリット
循環棚卸には、以下の3つのデメリットがあります。
- 手作業による精度の低下
- 高度な在庫管理が必要
- 棚卸し作業の長期化
手作業による精度の低下
手作業による循環棚卸はミスが起きる可能性があり、在庫のカウントミスが起こるリスクがあります。また、スタッフの経験値によって作業精度が異なるため、在庫データの精度にも影響します。
一斉棚卸の場合も同様ですが、循環棚卸のように定期的に何度も実施することで、そのリスクがより大きくなります。手作業による棚卸し作業のミスを減らすためには、在庫管理システムを導入して在庫状況を正確に管理しましょう。
高度な在庫管理が必要
循環棚卸は、あらゆる場所で頻繁に実施することになるため、在庫管理を正確に行うことが求められます。在庫差異があまりに大きい場合は、在庫管理方法に問題があるケースが少なくありません。
在庫差異があまりに大きい場合には、結局営業を一旦ストップして一斉棚卸を行う必要があり、売上が一時的に落ちる可能性があります。商品の入出庫が多い倉庫の場合は、在庫管理の業務の見直しや在庫管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
棚卸し作業の長期化
循環棚卸では、在庫の種類や場所ごとに作業する日時を分けて棚卸しをするため、棚卸し作業がすべて完了するまでに時間がかかります。短期間で全商品の実在庫を確認したい場合には不向きといえます。
また、必要以上に作業時間がかかってしまう場合は、新たにスタッフを雇用するなどの対策が必要のため、人件費が追加で発生します。循環棚卸の時間を短くしたい場合、業務プロセスの見直しや、棚卸し作業のアウトソーシングなどの対策を行う必要があります。
5循環棚卸を効率化するポイント
循環棚卸を効率化するポイントは、以下の4つです。
- 責任者を明確にする
- 業務のルールを設ける
- 在庫管理システムを導入する
- 棚卸し作業をアウトソーシングする
責任者を明確にする
循環棚卸の責任者に、棚卸し作業の熟練スタッフを配置することによって、棚卸し作業を効率化できます。経験のある責任者が棚卸し作業の計画を立て、業務マニュアルを作成することによって、棚卸し作業の質・スピードを向上させることが可能です。
ただし、循環棚卸の責任者を配置するときに業務を丸投げするのではなく、業務を全うしてもらうために責任者の業務範囲を明確にする必要があります。
業務のルールを設ける
循環棚卸に関する業務ルールを設けることによって、スタッフが行うべきことが明確になるため、棚卸し作業の精度・効率を上げることができます。循環棚卸では、実施するたびに異なるスタッフが担当になることもあり、作業精度が経験値に依存してしまうこともあります。
スタッフの能力に依存したり、実施日によって手順や方法が変わってしまうことを避けるために、ルールを設けて棚卸し作業の質・効率を高めましょう。設けたルールは定期的に見直して、現場のスタッフが理解・運用しやすいものに修正していくことが大切です。
在庫管理システムを導入する
在庫管理システムを導入することによって、在庫データを適切に管理できるため、理論在庫と実在庫に大きな差異が発生することを防止できます。
すべて手作業による在庫管理をしている場合、どのような原因で在庫差異が発生したのか追跡することが難しいことも多く、最悪の場合は、一斉棚卸を実施しなければいけなくなることもあります。在庫を適切に管理できていないことによる在庫差異が多く発生している場合は、在庫管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
棚卸し作業をアウトソーシングする
循環棚卸の人員確保ができない場合や、棚卸しのノウハウ・経験がない場合は、棚卸し作業を外部のプロにアウトソーシングすることもおすすめします。
自社で適切な循環棚卸を実施するためには、在庫管理を正確に行うだけでなく、棚卸し作業を行うスタッフの経験値に依存しない仕組みを構築する必要があり、手間とコストがかかります。自社のリソース確保が難しい場合は、棚卸し作業をアウトソーシングしてみてはいかがでしょうか。
6まとめ:循環棚卸を実施して、在庫を正確に把握しよう
循環棚卸とは、在庫の場所・種類などの基準で日時を分けて棚卸し(実地棚卸)をする方法であり、倉庫すべての業務を停止せず、少ない人員で作業できることが分かりました。
棚卸しを正確に行うためには、在庫状況を正確に管理するだけでなく作業精度の担保も必要です。自社でのリソース確保が難しい場合は、物流代行会社へのアウトソーシングを検討してみてはいかがでしょうか。
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