トレンドの移り変わりが激しいアパレル業界は、余剰在庫を抱えやすく、在庫管理が売上に与える影響が大きい特徴があります。自社の在庫管理に悩み、適正化の方法を模索する担当者も少なくありません。
本記事では、アパレル業界における在庫管理の課題と改善策のほか、効率的な管理方法について解説します。
目次
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1アパレル業界における商品の特徴
アパレル業界で在庫管理が問題になりやすいのは、商品の性質と深い関係があります。アパレルで扱う衣服や小物などは、一部の定番商品以外、トレンドの移り変わりが非常に激しいからです。在庫管理を煩雑化させているアパレル商品の特徴は、主に下記の3つが挙げられます。
商品の種類が豊富
アパレル業界が取り扱う商品は、トップス・ボトムス・アウター・下着類といった衣服から、帽子・バッグなどを含むアクセサリーまで、多岐にわたります。
また、メンズ・レディース・キッズなど、性別や年齢によるカテゴリーがあるほか、
同じ「レディースのセーター」でも XS・S・М・L と多様なサイズがあり、カラーバリエーションも豊富です。
また、春夏もの・秋冬ものという、2つのシーズンで商品が大きく入れ替わるため、1年を通じて販売される商品はほとんどありません。
トレンドの変化が激しい
アパレル商品は、季節や年によってトレンドが変化します。
「春は青・冬は黄色」「昨年の冬はタートルネック・今年はクルーネック」といったように、好まれる商品の色や形が短期間で大きく変わるため、トレンドを先読みして商品を展開する必要があります。
返品のリスクがある
商品の欠陥など、主に売り手側に原因があるもの以外に「思っていた色と違った」「サイズが好みに合わない」などの理由で返品される可能性があるのも、アパレル商品の特徴のひとつです。
2アパレル業界の在庫管理が難しい理由
アパレル業界の在庫管理が難しい理由は、前述した商品の特徴によって、適正な在庫数を保つことが難しいという点にあります。トレンドの変化や返品などが在庫管理にどのように影響するかついて、詳しく見ていきましょう。
需要予測が立てにくい
製造から小売まで一貫して行う製造小売業以外は、1年程前から翌年の商品の企画・生産をスタートします。この時点では、何がトレンドになるのかを確実に把握することはできないため、ある程度の予測にもとづいて生産を開始しなければなりません。結果として、トレンドから大きく外れた商品在庫を多数抱えてしまうようなこともよく起こります。
商品のライフサイクルが短い
アパレル商品は通年で売れるものがほとんどなく、今年の春夏ものの流行商品が来年の春夏も売れるとは限りません。トレンドに沿わない商品は価値が下がって売れ行きが落ちるため、余剰在庫となる可能性が高まります。
返品やアウトレットによる在庫処分がある
アパレル商品は、販売側のミスや消費者の都合で返品されることがあります。返品された商品もアウトレットとして再販できる可能性があるため保管が必要となり、新商品と区別しなければならないという手間が生じます。
また、返品の対応には工数がかかる上に、返品された商品をアウトレットとして再販した場合には、原価割れを起こすことが多くなります。
検品ミスが起きやすい
インターネットの普及によって、消費者はメディアが発信する情報を受け取るだけでなく、自分で検索して好みに合う商品を購入するようになりました。こうした消費者ニーズの多様化に伴い、アパレル業界はこれまで以上にアイテムのバリエーションを増やし、多様なサイズや色を展開しています。
商品数や商品の種類が増加すると、人力の検品では商品数を数え間違えるなどのミスが起きやすくなり、結果的に在庫の過不足が発生しやすくなってしまいます。
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3アパレル業界の在庫管理を改善するための考え方
アパレル業界の在庫管理にまつわる問題を解消するために、まずはどのような在庫管理の体制を構築すれば良いかという、方針の策定が必要です。
一般的には、下記の4つの考え方を取り入れることが重要だとされています。
在庫状況を見える化する
在庫管理を改善するためにまずできることは、誰が見ても在庫の現状を把握できるようにすることです。
「どの商品の在庫がどれだけあるのか」「どこにどの商品が保管されているのか」を見える化することで、返品や売れ残りでいつの間にか在庫が増加して、倉庫を圧迫しているという状況を防ぐことができます。
在庫管理作業を標準化する
在庫管理の方法が複雑だと共有が難しく、作業が属人化しがちです。すると、ベテランの担当者が休んだ場合や急に退職した場合に対応できなくなり、管理が滞ってしまいます。
そこで、ベテランの担当者だけでなく、経験の浅い担当者やアルバイトでも在庫管理ができるように、わかりやすく簡単なルールを導入して作業を標準化することが大切です。在庫管理システムを導入して、作業を効率化するのも有効な方法といえます。
適正在庫を維持する
適正在庫とは、欠品による機会損失や過剰な在庫がなく適切な在庫数を保った状態のこと。
適正在庫を保つことで、ニーズにしっかり答えつつ在庫を売り切ることができます。担当者全員が在庫状況を理解して行動することで、価格の下落や値引きにつながる過剰在庫を抑制することが可能です。
在庫スペースを整理する
在庫の状況をひと目で把握できるようにするには、在庫スペースの確保と管理がポイントです。性別・色・サイズ・今シーズンの売れ筋商品など、在庫の種別ごとに在庫スペースのレイアウトを区切っておくと、在庫の状況を把握しやすくなります。
4アパレル業界の在庫管理を楽にするための具体策
在庫管理の考え方を実践する上で、常に変動する在庫をアナログな方法で正確に管理するのは非常に難しく、在庫管理が煩雑になるアパレル業界ではなおさら困難です。
在庫管理の負担は、ツールなどを用いることで削減可能です。ここでは、その具体策をご紹介します。
Excelの在庫管理表を使う
商品を仕入れた場合に、その商品にまつわるさまざまな情報を記録しておくものが在庫管理表です。管理する情報は「商品名」「商品番号」「在庫数」「入出庫日付」「入出庫数」など多岐にわたり、人力で記録していては手間がかかる上にミスにもつながりやすいため、Excelなどの表計算ソフトを使って管理することをおすすめします。
入荷時と出荷時にあらかじめ決まっている項目を入力し、随時情報を更新することで大幅に負担を軽減できます。
POSレジを導入する
POSとは「販売時点情報管理」といって、会計時にレジでバーコードを読み取ることで、商品が売れた時期や売れた場所などが自動的に登録できるシステムです。
このデータを活用すると、「一番売れている商品は何か」「どれくらい在庫があるか」といったことが簡単に把握でき、無駄のない在庫管理を実現できます。
在庫管理システムや物流代行業者を利用する
在庫管理システムは、在庫数の一括管理、QRコード読み取りなどによる入出庫情報の管理、入出庫時の検品、返品時の商品情報管理といった機能を搭載した、在庫を管理するためのシステムです。在庫管理システムを導入すれば、過去データから在庫分析を行うこともできます。
また、店舗数が多いアパレル会社や、扱っている商品数が多い場合は、在庫管理や出荷業務などをまとめて専門業者にアウトソーシングするというのもひとつの手段です。
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5アパレル会社が在庫管理システムを導入するメリット
在庫管理システムを導入すると、在庫管理表への入力や検品などを人力で行うことに比べて、負担が大幅に軽減されます。特にアパレル業界では、商品の種類が多いなどの理由で在庫管理が煩雑化し、Excelによる管理でもうまくいかないケースもあるため、その効果は大きなものがあります。
在庫管理システムの導入による効果としては、具体的には下記の3つが挙げられます。
在庫管理要員を削減できる
在庫管理システムの導入で、在庫管理要員を減らすことが可能です。
その分の人件費を削減することも可能ですし、これまで在庫管理を担当していた人を、購入者とのコミュニケーションが必要なポジションやクリエイティブな作業など、システムで代用できない作業に配置転換することもできます。
誰でも在庫管理情報にアクセスできるようになる
在庫確認をするために何度も倉庫へ出向くことなく、あらゆる場所からリアルタイムで在庫状況にアクセスできるようになるというのも、在庫管理システムのメリットです。在庫管理の担当者に問い合わせる必要がなくなり、作業を効率化できます。
ミスが減り作業スピードが上がる
在庫管理システムにより、在庫管理表への入力漏れや二重記帳といった人的ミスを減らすことができます。また、在庫確認作業にかかる時間が削減され、タイムリーな発送を行うことも可能です。
6アパレル会社が在庫管理システムを導入するデメリット
在庫管理システムの導入は大きなメリットをもたらしますが、デメリットにも目を向け、慎重な検討をしなければなりません。一般的に考えられるデメリットは、下記の2つです。
導入コストが高い
システムの導入には、一定以上のコストがかかります。
費用対効果をよく検討することが必要です。なお、自社の課題やニーズに合ったITツールの導入には、国が支給するIT導入補助金が使える場合もあります。
移行に労力が必要
人力で入力を行ってきた在庫管理を、システム管理へ移行することになるため、現場でのルール変更やマニュアルの作成が新たに必要になります。システムの導入が完了するまで、今までの在庫管理業務と並行して導入作業を進めることも多いため、現場が混乱しないよう十分に準備しなければなりません。
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7アパレル会社が在庫管理で物流代行を利用するメリット
在庫管理システムの導入のほかに、物流代行業者を利用するというのもひとつの方法です。
アパレル業界における在庫管理の実績豊富な物流代行業者であれば、代行を依頼することによる効果は大きいでしょう。主なメリットとしては、下記の2つを挙げることができます。
プロが高品質な管理をしてくれる
物流代行業者は、入荷検品、商品保管、梱包、出荷など、在庫管理周りの煩雑な作業を一括で任せられるプロフェッショナルです。経験豊富のため、安心して自社の商品を任せることができます。特にアパレル商品は、その特性を理解した適切な保管がカギになります。
例えばアパレル商品と一言でいっても、素材や生地の厚さ、重さなどは大きく異なり、それに応じて、ハンガーラックにかけるのかキャビネットに入れるのかなど、最適な保管方法も変わります。
人件費が削減できる
プロに依頼すると、これまで在庫管理などに従事していた担当者が不要になり、人件費の削減につながります。併せて、商品の保管費や管理費も削減が見込めます。
8アパレル会社が在庫管理で物流代行を利用するデメリット
物流代行業者を利用するデメリットは、物流や発送に関するノウハウが社内に蓄積しないことですが、今後も物流を一括してアウトソーシングしていく方針であれば、ノウハウ蓄積は不要ともいえます。割り切って本業に専念することで、売上アップも実現できるかもしれません。
9まとめ:アパレル在庫管理はシステムや物流代行で効率化を
アパレル業界の在庫管理は非常に難しく、在庫管理のミスが余剰在庫や欠品、顧客満足度の低下を招くこともあります。システムや物流代行業者の導入を検討し、在庫管理の効率化を図りましょう。アパレルに関する物流代行にご興味がありましたら、お気軽にご相談ください。
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