在庫管理とは？目的や重要性、効率良く行う方法をわかりやすく解説

在庫とは、将来、現金化される可能性がある物すべてを包括的に指す言葉です。

たとえば、商品を製造している工場にとっての在庫とは、素材（原材料）や製造中の未完成品である仕掛品（しかかりひん）、半製品なども、最終的に販売され、現金化される可能性があるため在庫となります。業種や作業工程のタイミングで、在庫が何を指すかは異なります。

在庫管理とは、需要に対して自社にある在庫を適切に供給できるよう、在庫数や在庫の状態を管理することです。在庫は現金化でき、決算でも資産として計上されます。

在庫管理は、会社にとっての資産を管理することと同じ意味を持つ、重要な業務といえます。

在庫管理の目的は、多すぎず少なすぎず、適切な在庫数を維持することです。

販売されない在庫が過剰にあるということは、資産が増えて管理コストがかかるのに現金は増えないということであり、キャッシュフローの悪化に直結します。

また、保管期間が長引くうちに消費期限を超過したり、何らかの事情で商品が損傷したりするケースが発生すると、廃棄コストも負担しなければなりません。一方、在庫が不足して欠品が出た場合、購入ニーズに応えられないことで機会損失につながってしまいます。

在庫は、多すぎても少なすぎても企業の利益に悪影響を与えます。在庫管理が重要な理由としては、以下の７点が挙げられます。

余剰在庫の削減につながる

余剰在庫とは、本来の必要数より多く商品を入荷したために売れ残り、倉庫に商品が蓄積されたままの状態であることです。余剰在庫はやがて商品価値のない不良在庫になるため、経営に悪影響を及ぼします。

在庫管理を行うと、常に適切な在庫数を維持し、余剰在庫の発生を防ぐことが可能です。

余剰在庫がなくなれば、倉庫内の保管スペースに余裕が生まれ、イレギュラーな入庫にも慌てずに対応することができるようになります。使用するスペースに応じて倉庫の賃料を払っているような場合は、その賃料を削減することも可能です。

また、余裕ができたスペースに新商品の仕入れができるため、売上アップにもつながります。

顧客対応を迅速化できる

在庫管理ができていると、ニーズに応じて迅速に商品を提供できるようになります。常に適正な在庫が確保されているため、欠品による停滞がなくなり、注文に適切かつ迅速に対応することが可能です。

「すぐに商品が手に入るか」「すぐに手に入らないなら、いつなら届くか」「代わりの商品としてどのような選択肢があるか」などをスピーディーに伝えられるようになり、顧客満足度の向上も期待できます。

生産性の向上につながる

在庫管理を行うと、在庫の数やロケーションを担当者全員が共有でき、スムーズに動けるようになるため生産性が向上します。在庫管理のルールを徹底することで、商品の入荷時に何をどこに保管すればよいか明確になるため、スムーズな処理が可能です。

出荷時も同様に、保管場所を探す手間がかからず、ピッキングがはかどります。業務が効率化されて担当者の作業時間が削減されるため、人件費や光熱費といったコストも削減できます。

生産量と需給バランスを最適化できる

在庫を適切な量で維持し、リアルタイムで在庫数を把握していると、「何が、いつ、どのくらい売れるか」を考慮して「何を、いつごろ、どの程度仕入れるか」を決定することも可能です。多すぎず、少なすぎない、需給バランスのとれた生産を実現できます。

管理コストを削減できる

在庫には、倉庫の賃料や人件費を含む管理費、返品費など、気が付きにくい様々なコストがかかっています。すぐに現金化できない在庫が増えると、見えないコストが利益を圧迫するため、注意しなければなりません。

在庫回転率や需給予測をもとに、在庫数を適正な範囲内で維持する在庫管理によって、管理コストを抑えることが重要です。

商品の品質が高い状態を保てる

在庫は、保管期間が長くなるにつれて湿気などで劣化が進み、価値が低下します。在庫管理を適切に行うことで、古いものから順に出荷していく先入れ先出しが可能になり、品質を維持することができます。

キャッシュフローを改善できる

在庫管理によってリアルタイムで正確に在庫を把握し、余分な仕入れや在庫不足を防ぐことができれば、キャッシュフローの改善が可能です。

在庫は資産として計上されますが、販売されない在庫の状態のままでは価値が減少していくだけです。在庫が適切なサイクルで現金化されないと、最悪の場合、業務停止や倒産の可能性もありえます。

在庫管理を適切に行うための発注方式には、定量発注方式と定期発注方式という２つの方式があります。それぞれ、以下のような特徴があります。

定量発注方式

定量発注方式は、在庫数を基準とした在庫管理の方法です。

商品の在庫数がある一定の量まで減ったとき、あらかじめ決めておいた量を発注します。発注をかける目安となる在庫数を「発注点」、事前に決めておく発注数のことを「発注量」といいます。

定量発注方式は「数」を基準として毎回一定量を発注するため、予測や計算の手間がなく、作業計画が立てやすい点がメリットです。発注漏れや発注遅れも防ぐことができます。ただし、常に一定の発注数であるため、需要の増減には対応しにくい点に注意が必要です。

定期発注方式

定期発注方式は、原材料や商品の在庫数にかかわらず、「期間」をもとに在庫を発注する方式です。発注するタイミングが事前に確定しているため、発注忘れが起こりません。

ただし、発注タイミングが来たら、その都度、需要の増減などをもとに発注数を決めるため、発注時ごとに最適な発注数を算出する必要があります。

表計算ソフトによる在庫管理表の作成

導入のハードルが低いのは、表計算ソフトで在庫管理表を作る方法です。表に商品名、品番、入庫数、在庫数、入庫日などを記入し、関数を使って管理します。表計算ソフトは通常業務で使用していることが多く、追加コストがかかりません。

この方法の課題について詳しくは、後述の「表計算ソフトでの在庫管理の課題」の項目で解説します。

在庫管理システムの活用

在庫管理システムは、商品の入荷から出荷までの在庫の情報を可視化・管理するシステムです。在庫の入出荷データや消費期限などの情報を、変動があるたびにリアルタイムで管理できる仕組みとなっており、ヒューマンエラーが起こる可能性を最小化できます。

表計算ソフトを用いた在庫管理は、気軽に導入できる方法ですが、課題も少なくありません。運用上、以下の５点が問題となる可能性があることは、念頭に置いておく必要があります。

リアルタイムで在庫状況の把握ができない

表計算ソフトによる管理では、在庫数の変動があった際に自動的にその情報が管理表に入力されないため、リアルタイムで在庫状況を把握することができません。

入力担当者の不在によって、情報の更新が遅れる可能性もあります。在庫管理表を確認しても、最新の情報が確実に手に入るわけではないという点を考慮した運用が必要になります。

管理が属人化してしまうリスクがある

表計算ソフトで管理表を作る場合、表計算ソフトの扱いに精通している担当者が作成し、そのまま運用も担うのが一般的です。複雑な関数などが使用されてしまうと、ほかの担当者では運用できない管理表が作成される可能性があります。

結果的に管理が属人化し、作成者が不在の時や異動になった場合の引き継ぎが困難になります。またトラブル発生時に、作成者以外は対応できない可能性がある点にも注意が必要です。

ヒューマンエラーが起きやすい

表計算ソフトへの入力は手作業で行うため、どれほど注意していても入力漏れや入力ミスが起こる可能性があります。また、別の担当者が表を開き、誤って情報を消去してしまうようなミスの可能性も否定できません。

その点、ハンディターミナルで情報を非接触で読み取れるRFIDタグやバーコードを活用できる在庫管理システムなら、ヒューマンエラーが起きるリスクは限りなく低く抑えられます。

データ管理が複雑化する可能性がある

表計算ソフトによる管理表では、商品ごとに在庫数や入庫日などの動きを記録するため、情報量が多くなるとデータが重くなり、破損して開けなくなったりする可能性があります。

このリスクを避けるため、複数のデータを作成して管理しようとすると、データの管理が複雑化し、どのデータが最新なのかわからないというケースが発生しかねません。場合によっては業務効率が落ちてしまう危険性があるのです。

精度が落ちて利益を圧迫する可能性がある

手作業で入力する表計算ソフトによる管理では、最新の在庫情報の把握が難しいため在庫管理が不正確になり、適正な在庫数の確認だけでなく需要予測にもずれが生じる可能性があります。結果として、欠品や余剰在庫が発生し、利益を圧迫する事態にもなりかねません。

在庫管理は、日々変動する多くの商品の在庫数や在庫の状態を適切に管理しなければならないため、煩雑化しやすく、ポイントを押さえて効率的な管理を行う必要があります。

在庫管理を効率的に行うためには、以下の８つの方法を検討することをおすすめします。

＜在庫管理を効率化するための管理・分析方法＞

• ABC分析を導入する
• 在庫回転率の考え方を導入する
• 倉庫内を整理整頓する
• 在庫管理のルールを決めマニュアル化する
• ロケーション管理を行う
• 先入れ先出しを浸透させる
• 在庫管理システムを導入する
• 在庫管理業務をアウトソーシングする

ABC分析を導入する

在庫管理におけるABC分析とは、在庫の金額や売上などを指標として、在庫管理の優先順位を決める手法です。複数ある商品に対して、重要度が最も高いものからA、B、Cとグループ分けをして管理します。

在庫が切れると売上に大きな影響を及ぼす商品はAグループに入れ、欠品を出さないよう優先的に在庫管理をします。そして、Aより重要度の劣るBグループの管理は定期発注や定量発注などによる現状維持、最も重要度の低いCグループの管理は在庫が切れてからの発注、などと管理方法を区分します。

このように、優先順位に応じて発注を最適化することで、在庫管理の効率を上げて売上を向上させることができます。

在庫回転率の考え方を導入する

在庫回転率は、特定の期間で保有している在庫がどのくらい入れ替わっているかを示す指標です。原則として、数値が高いほど売れるまでの期間が短く、低いほど売れるまでに時間がかかることを表します。

商品ごとの売上への影響度合いを可視化でき、余剰在庫の削減や仕入れの調整に役立つため、在庫管理を効率化する方法のひとつとして、在庫回転率の考え方を導入するのが効果的です。

在庫回転率を活用する場合は、業種や季節、商品特性によって適切な在庫回転率が異なることには注意が必要です。

倉庫内を整理整頓する

適切な在庫管理をするための準備として重要なのが、倉庫の整理整頓です。商品の保管場所や並べ方が決まっていないと倉庫内が乱雑になり、在庫状況の把握に手間がかかります。倉庫内での動線を確保し、商品の確認や移動がしやすい環境を整えることが重要です。

在庫管理のルールを決めマニュアル化する

商品の保管場所や管理方法についてルールを策定し、管理方法を統一することで、商品を探す時間を減らせます。在庫管理のルールが決まったら、マニュアルを策定して統一化した方法を担当者全員に浸透させましょう。

これにより、作業の属人化を防ぐことができます。在庫管理の担当者が代わった場合にも、マニュアルを利用して作業を覚えられるため、人材育成のスピードが上がります。

ロケーション管理を行う

ロケーション管理とは、在庫の保管場所に住所のような位置情報を設定し、客観的にわかりやすい方法で在庫を管理する方法です。

たとえば、ある商品をA棚の上から3番目に置いた場合、「A-3に置いた」として管理します。これにより、在庫を保管した人以外でも、すぐに在庫の保管場所を特定してスムーズにピッキングすることができます。

先入れ先出しを浸透させる

先入れ先出しとは、入荷日時が古い商品から出荷する方法です。先入れ先出しを徹底することで、在庫の長期保管による品質低下を防ぎ、不良在庫が発生することによる損失を減らすことができます。

先入れ先出しを行うには、入荷日の古い在庫を手前に置き、入荷したばかりの在庫は奥に並べるようにしましょう。

賞味期限の早い食品を手前に並べる陳列方法を思い浮かべると、わかりやすいかもしれません。入荷日を明記したタグを商品に貼り、日付を目視しやすくすることも先入れ先出しの徹底に有効です。

在庫管理システムを導入する

在庫管理の効率化に特化した在庫管理システムには、専用の機械でバーコードなどを読み取ることで在庫数や保管場所、消費期限といった情報を自動で登録できる仕組みが備わっています。これにより、入力ミスを減らしつつスピーディーに在庫情報を管理することが可能です。

在庫管理システムを活用すれば効率良く正確に在庫を把握できるため、生産性が向上します。

在庫管理業務をアウトソーシングする

在庫管理にかけられるリソースに制限がある場合、物流代行会社にアウトソーシングするのも有効な方法です。

アウトソーシングすることで、自社で在庫管理をする必要がなくなり、人材不足の解消や、これまで在庫管理に関わっていた人材をコア業務に集中させることが可能になります。サービス品質に定評のある物流代行会社では適正在庫の提案も行うため、物流コストの最適化にもつながります。

手作業での在庫管理に限界を感じたら、在庫管理システムの導入を検討するのがおすすめです。在庫管理システムの主なメリットとしては、下記の３点が挙げられます。

在庫の状況をリアルタイムで把握できる

在庫管理システムを利用すると、どの在庫がどこにいくつあるか、在庫の状況をリアルタイムで正確に把握することができる点がメリットです。

在庫確認のタイムラグがなくなれば、在庫の過不足が生まれにくくなりコストが削減できるほか、ニーズに応じてすみやかに商品を提供することが可能になります。

在庫管理の作業品質が向上し、ミスが減る

在庫管理の品質が向上しミスが減る点も、在庫管理システムのメリットです。人に依存した在庫管理は、対応する人によって品質にムラが生まれやすいといえます。

在庫管理システムを導入し、RFIDや、バーコードを読み取るハンディターミナルを活用すれば、担当者の熟練度にかかわらず高い精度で在庫を管理することができます。

欠品や余剰在庫を防ぐ精度の高い管理が可能になる

在庫管理システムのメリットは、欠品や余剰在庫を防ぐ精度の高い管理ができることです。
在庫が多すぎると不良在庫が増え、少なすぎると欠品の頻度が高くなります。

在庫管理システムによって、自社の在庫を統合的に管理することができれば、複数のチャネルがあっても在庫数を同期できるため、常に全チャネルの在庫を適正な数で維持することができます。

導入時にはハードウェアの購入費、自社に合わせたカスタマイズのための費用、コンサルティング費用などがかかります。加えて、ソフトウェアの使用料も必要です。導入前に、在庫管理システムを導入するメリットとコストを比較検討し、慎重に判断してください。

＜在庫管理システムを有効活用するためのポイント＞

• 目的や必要な機能を明確にして自社に適したシステムを選ぶ
• ほかの業務システムと連携可能な製品を導入する
• システムを活用した業務フローをマニュアル化して浸透させる

目的や必要な機能を明確にして自社に適したシステムを選ぶ

在庫管理システムには、オンラインストレージを活用するクラウド型や、ソフトウェア・ハードウェア・サーバーなどを自社で構築するオンプレミス型など、様々なタイプがあります。また、付随する機能に応じて、費用も異なります。

自社にとって最適な形態や、必要な機能をよく検討して、自社の特性に適したシステムを選びましょう

ほかの業務システムと連携可能な製品を導入する

在庫管理システムの中には、調達管理・販売管理など、ほかの業務管理システムと連携できる機能が搭載されているものがあります。すでに利用しているシステムと連携できるのかどうかも含め、連携するためにはどのくらいの改修コストが発生するのかを確認しましょう。

システムを活用した業務フローをマニュアル化して浸透させる

在庫管理システムを導入したことを社内にアナウンスするだけでは、業務を効率化することはできません。

現場担当者がシステムに慣れるまでは、ある程度の時間がかかります。新しいシステムをすみやかに浸透させるためには、システムを活用した新たな業務フローをマニュアル化して共有しましょう。

在庫管理で適正在庫を保つことで、生産性の向上やキャッシュフローの改善につながり、経営に良い影響を与えます。

倉庫内の整理整頓や在庫分析手法の導入、先入れ先出しの実践などに加えて、作業マニュアルの作成や在庫管理システムの導入を進め、在庫管理の精度と効率の向上に取り組んでみてはいかがでしょうか。

自社で在庫管理が難しい場合は、アウトソーシングも有効な手段です。
物流のプロに在庫管理を委託することで業務を効率化できるほか、物流コストの最適化や顧客満足度の向上にもつながります。在庫管理にお悩みでしたら、ぜひ当社へお問い合わせください。

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