宅配需要が増加する一方で人手不足が進む物流業界では、コスト削減と業務効率化が喫緊の課題です。さまざまな施策が実践される中でも、国土交通省が導入を推進する物流業務形態として注目を集めているのが3PLです。
本記事では、3PLのメリットや導入時の注意点、種類などについて、わかりやすく解説します。
目次
物流アウトソーシングの
検討時期やポイントを解説!
※委託先選定チェックリスト付き
13PLとは
3PLは「サード・パーティー・ロジスティクス(third party logistics)」の略称で、「スリーピーエル」または「さんピーエル」と読みます。
サード・パーティーは第三者の意味で、IT領域では、他社商品の関連商品を販売する企業を指す言葉として浸透しました。物流においては、荷主企業が自社の物流業務をアウトソーシングする際の、委託先の第三者企業を表す言葉として使われます。
3PLに似た言葉として、1PL・2PLという言葉もあり、それぞれ下記のような違いがあります。
<1PL・2PL・3PLの違い>
- 1PL(ファースト・パーティー・ロジスティクス):
荷主やメーカーが自社のみで物流業務を行うこと - 2PL(セカンド・パーティー・ロジスティクス):
荷主やメーカーが自社で物流の仕組みを構築しながら、一部の業務を外部に委託すること - 3PL(サード・バーティ・ロジスティクス):
荷主やメーカーの物流業務を第三者が包括的に代行すること
つまり3PLは、物流の専門業者である第三者企業に物流業務をアウトソーシングする仕組みを表しています。
国土交通省は3PLを「荷主企業に代わり、最も効率的な物流戦略の企画立案や物流システムの構築の提案を行い、かつ、それを包括的に受託し実行すること」と定義しています。(参考:国土交通省/物流:3PL事業の総合支援)
3PLは倉庫業と混同されがちですが、倉庫業の主な目的は商品(製品)の「保管」であり、物流業務そのものではありません。倉庫業法では、倉庫業は「寄託を受けた物品を倉庫において保管する事業」と定義されています。単に保管するだけでなく、物流業務全般を担う点で、3PLと倉庫業は一線を画しているといえます。
3PLが求められる背景には、需要拡大に伴うメーカーや荷主の負担増があります。
煩雑化した物流業務に対応するには、倉庫管理システム(WMS)などへの設備投資のほか、従業員への教育などが必要になり、本来注力すべきコア業務がおろそかになりかねません。
そこで、物流業務を丸ごと3PL事業者に委託する動きが加速しているのです。国土交通省が導入を推奨していることも、取り組む企業が増加している理由の1つとなっています。
23PLのメリット
3PLを導入することには、主に下記3つのメリットがあります。
うまく活用できれば、生産性向上や事業拡大につなげることが可能です。
コスト最適化と専門業者による物流品質の向上
3PLによって自社の物流業務は、効率を熟知した物流企業が担います。
その結果、これまで実行してきたオペレーションの工数がなくなり、コストを最適化しつつ物流品質を向上できる可能性が高まります。
例えば、繁忙期・閑散期があるケースでは、時期に合わせて人員配置を調整しようとしても、配置転換や短期雇用などは簡単には進められません。どうしても、繁忙期の残業増加や閑散期の余剰人員の発生に悩まされがちで、物流品質が不安定になる可能性もあります。
3PLを導入すると、3PL事業者が需要に合わせて受け入れ態勢を整えてくれるため、人員配置を最適化することが可能です。さらに、3PLの費用は出荷量に応じて変動するため、物流コスト全体の最適化にもつながります。
自社物流でコスト最適化を進めようとすると、コストを減らすことだけに注力して品質がおろそかになりがちですが、3PLであればコスト最適化と品質維持を両立できます。
リソース不足の解消・労働環境の改善
物流を内製化している企業のほとんどは、人手不足の中でなんとか必要なスタッフをやりくりしています。3PLを活用することで、物流業務が効率化し、リソース不足の解消につながるでしょう。
また、リソース不足が解消されると、既存のスタッフの労働環境も改善されます。働き方に無理がなくなり、企業に対するエンゲージメントの向上も見込めます。
経営資源の最適化
3PLによって、これまで物流に割いていた優秀な人材を、営業や商品開発といったメイン業務に配置できるようになります。
信頼できる3PL事業者が物流業務を担ってくれるという安心感もあり、顧客の拡大や新商品の開発・改良に思い切り力を注ぐことができるかもしれません。企業の成長には、経営資源の最適な配置は非常に効果的です。
物流アウトソーシングの
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33PL導入時の注意点
3PLに物流業務を委託できると、さまざまなメリットが期待できます。
ただし、安易に導入すればいいというわけではなく、導入に際しては、下記のような点に注意しなければなりません。
物流戦略や委託したい業務を明確にする
3PLを導入する場合、荷主企業である自社と、委託先の3PL事業者との信頼関係に基づく連携が何より重要です。
必要な情報や物流戦略を共有しないまま業務だけ委託しても、効率化は見込めません。
継続的に効率化していくためには、荷主企業が抱える課題と、どのような物流を実現したいかという物流戦略の理解が欠かせないからです。
物流業務を抜き出して任せるだけで満足するのではなく、自社の経営戦略実現のために必要な物流体制を検討し、そのために何が最も大きな課題であるか、3PL事業者にしてほしいことは何かなどを共有しましょう。
コストを意識しすぎない
3PLを導入する目的の1つにコスト削減があるのは確かですが、この点ばかりを意識してコストが安い事業者を選ぶと、物流品質が下がる可能性があります。
3PLは長期的に運用することで着実に効果を出していくことが望ましいため、短期的なコストだけに注目せず、3PL導入によって得られる物流品質とのバランスを十分に確認することが重要です。
十分な品質を実現できるか確認する
3PLを導入する際は、十分な物流品質を実現できる業者を選ばなければなりません。
3PLの品質は、下記の3点を見ていくことで確認できます。
ICT環境
効率的で、正確な物流業務を実現するには、ICTによる精度の高い在庫管理・入出庫管理が欠かせません。高度にシステム化された物流サービスを提供している事業者なら、現場のオペレーションや分析がスムーズで、質の高いサービスの提供が期待できます。
現場の作業品質
現場のオペレーションは、3PL事業者からさらに委託を受けた下請け業者や孫請け業者が担当していることもあります。品質チェックの際は、現場の作業の質も忘れずにチェックしてください。
過去の実績
信頼性の高い3PL事業者は、実績も豊富です。ウェブサイトなどで、どのような企業からの委託実績があるのかを確認し、自社に最適なサービスを提供してくれそうか、客観的に評価しましょう。
情報共有は密に行う
3PLの導入を成功させるためには、導入する際に入念な検討をしたとしても、それだけでは不十分です。
3PLの成功は、荷主企業と3PL事業者との信頼関係の醸成にかかっているといっても過言ではありません。
導入後はより緊密な連携を意識し、情報を適切に共有する必要があります。互いに連絡をとり合い、協力し合う関係性を構築しておくことで、繁忙期のイレギュラー対応やトラブル対応などもスムーズに行えるようになります。
当社では、日々のやり取りを「営業担当者」が行うほか、定期的に「ロジスティクス担当者」「物流現場管理者・作業者」と関係者全員揃った定例会を開催することで、コミュニケーション不足によるトラブルや機会損失を防ぎ、理想の物流を実現しています。
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43PLの種類
一口に3PL事業者といっても、さまざまな業者があります。提供するサービスや保有資産によって、大きく下記の2つのパターンに分類することが可能です。
アセット型
アセット(asset:資産)型は、トラックなどの輸送に必要な手段、荷主企業の荷物を保管するための倉庫、倉庫での在庫管理に利用する情報システムといった資産を自社で保有し、物流業務を包括的に受託するタイプの3PL事業者です。
アセット型3PL事業者は、自社雇用のスタッフがおり、人材不足が深刻化する中でも安定的に質の高いサービスを提供できます。自社の物流センターで作業するため、作業プロセスや倉庫の環境などを熟知しており、オペレーションがスムーズであることもアセット型ならではの特徴です。
3PL事業者からの再委託がなく、荷主企業と3PL事業者のみで連携が完結するため、3PLにおいて最も重要な2社間の連携を密にすることができます。作業のスピードと質が上がり、改善点もすぐに反映することができるでしょう。
現場のオペレーションに他社が介入しないため、スタッフの作業品質が維持できるほか、仲介手数料がなくコストを抑えられるのもアセット型のメリットです。
ノンアセット型
アセット型に対し、ノンアセット型は、物流のための施設や設備を保有していない3PL事業者です。物流に関する経験や技術はアセット型と同様に豊富で、それらを活かしたノウハウ提供を行うことからノリッジベース型とも呼ばれます。
ノンアセット型の場合、実務は外部の倉庫業者などと連携して他社のリソースを活用するのが特徴です。ノンアセット型は、自社の資産で対応できるサービスを提供するのではなく、依頼された内容ごとにパートナー企業の得意分野を組み合わせ、カスタマイズしたサービスを提供します。
荷主企業の物流戦略に合わせて、フレキシブルな提案ができるのは大きな強みです。車両がないため配送手段も限定されず、保管場所も荷主企業のニーズに応じた方法を提案できます。
53PLでありながら4PL機能も兼ね備えるスクロール360
3PLが発展した4PL
EC通販物流に関わる課題が複雑化してきている近年、3PLのみの導入では解決が難しいことも少なくありません。
当社では、現在の物流の状況やお悩み、ご要望を細かくお伺いさせていただきながら業務全体を可視化し、潜在する課題の発見から解決・運用改善のご提案も行っています。
3PLの機能に加えて、知見やノウハウを提供して物流まわりのコンサルティングも行う業務形態のことを4PL(フォース・パーティー・ロジスティクス)といいます。主に現場の物流オペレーションを請け負う3PLに対して、4PLは戦略策定や提案なども行う点が異なる機能です。
事業拡大を見据えるなら4PL導入も視野に
通販事業(物流規模)の拡大においては、綿密に計画を立てて慎重に進めなければなりません。将来的な成長・事業拡大を視野に物流の委託先を検討される場合は、物流の実業務のみならずロジスティクス戦略施策の相談やサポートができる4PL企業に委託することで、企業課題を解決しながら事業成長へと導きます。
6まとめ:信頼できる3PLを導入して物流課題を解決しよう
働き方改革関連法の改正に伴い、ドライバー不足や売上・利益の減少が予想される「2024年問題」など、物流業界は、人手不足に端を発するさまざまな課題を抱えています。迫りくる物流課題に対処するために、3PLを導入することで業務の効率化を図りましょう。
当社では、これまでの現場経験で積み上げてきた豊富な知見をもとに、チームワークに優れたプロフェッショナル集団が事業者さまの事業成長を全力でサポートします。
3PL・4PLサービスのみならず、フルフィルメント業務支援からEC運営支援までシームレスな連携力でトータルサービスを展開していますので、EC通販事業に関するお悩みがありましたら、ぜひご相談ください。
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